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FOMC声明で「相当な期間」を残した理由

 12月17日のFOMC後に公表された声明文では、「金融政策の運営姿勢の正常化開始において辛抱強くいられる(can be patient)と判断する」との表現が加わった。さらにこのガイダンスはゼロ金利政策を「相当な期間(considerable time)維持することが適切になるだろうとした前回の声明と合致する」とし、市場が注目していた「相当な期間」との表現を残す格好となった。

 日銀文学という表現があるが、政府を含めて景気判断などでは独特の表現が用いられ、たとえば景気判断を上方修正したのかどうかは、その表現方法をみて探ることになる。中央銀行にとっては今後の金融政策の行方を市場に示唆する際に、やはり文章表現にて行うことがあり、今回のFOMCの表現変更が注目されたのはそのためである。

 FRBのフィッシャー副議長は12月2日のWSJ紙主催の会議において「それに関する協議があったことが前回のFOMC議事要旨で分かっており、当局がその削除に数か月前よりも近づいているのは明白だ」と述べた。「それ」というのはFOMC公表文にある、低金利を「相当な期間」維持するとの文言に関するものであった。

 この大御所のフィッシャー副議長の発言もあり、今回のFOMCの声明文では「considerable time」を削除し、違う表現、たとえば2004年の利上げ前のFOMCの声明文にあった「patient」を持ってくるのではとの見方があった。2004年1月の声明文で「patient」を使った際には、5か月後に利上げを行っていた。

 今回、たしかに「patient」の表現を持ってはきたが、市場に配慮するためか「considerable time」との表現も残した。ただし、ガイダンスの中心は「patient」にあり、「considerable time」はサブ的な扱いであった。ここから読みとれるのは2015年6月のFOMCあたりを利上げ時期、つまりゼロ金利解除、正常化へのスタート日に置いているであろうということである。もちろん経済指標というか経済動向次第であることも確かである。

 それではなぜ「considerable time」との表現は削除しなかったのか。ここにきて原油安や追加安によるロシアからの波及リスクも考慮した可能性はあるが、イエレン議長は会見で「ロシア情勢が米国に及ぼし得る影響は小さい」と述べている。当然ながら米国経済に多大な影響が出ると考慮しないとなれば、ロシアのリスクでFRBが利上げを先送りする公算はむしろ小さい。

 おもしろい指摘もあった。ツイッターでのあるツイートで「considerable timeが残った理由は、テキストマイニング系のトレードを撹乱する意図があったのではないか」というものである。FOMCの声明文の文章を即座に読み取り、それにより瞬時にトレードするようなシステムが存在する可能性はある。もちろん瞬時ではなくても、声明文をさっと読んでトレードするディーラーもいるはずである。「considerable time」が残っているという事実だけで、利上げには慎重と判断されたとしてもおかしくはない。

 現実にこの表現が残ったことを好感してか、17日のダウ平均は288ドル高、18日には421ドル高となった。市場にはやさしいイエレン議長の作戦勝ちとも言えるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2014-12-19 09:46 | 中央銀行 | Comments(0)
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