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それでも追加緩和を期待するのか

 11月28日に発表された10月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除いた総合指数(コアCPI)が前年同月比プラス2.9%となった。日銀の試算による消費増税による影響分を除くと0.9%となり、2013年10月分以来の前年比1.0%割れとなった。日銀が物価目標としている総合指数も前年同月比プラス2.9%となっていた。

 以前に黒田日銀総裁は消費者物価指数の先行きについて、「1%台を割る可能性はない」と言い切っていた(たとえば7月15日の決定会合後の会見など)。ところが、今年7月あたりからの原油価格の急落により、その状況が変わってきた。その結果が、10月31日の量的・質的緩和の拡大、つまり異次元緩和第二弾となった。10月31日の決定会合議事要旨には以下のような指摘がある。

 「多くの委員は、原油価格の下落は長い目でみて日本経済にとってプラスであるものの、このところの大幅な下落は、消費税率引き上げの後の需要面での弱めの動きと合わせて、短期的には物価の下押し要因として働いていると指摘した。」(決定会合議事要旨より)

 米国でのシェールオイル生産拡大で対米輸出が減っていることなどもあり、原油は世界的に供給過剰となっている。欧州や中国などを中心とした世界経済の低迷もこの原油価格下落の背景にあるとされるが、産油国の歩調が合わないこともひとつの要因となっている。

 石油輸出国機構(OPEC)は11月27日の総会で、今の原油の供給量は適切だとして、焦点となっていた減産を見送った。加盟国の一部から値下がりに歯止めをかけるため減産するべきだという意見が出されたものの、最大の産油国サウジアラビアが価格の変動は短期的なもので減産の必要はないと主張するなどしたことで減産は合意に至らなかった。サウジアラビアなどがシェールオイル潰しを狙って仕掛けたとの見方もある。

 これを受けて原油価格はさらに下落し、11月27日にWTIは69.05ドルと70ドルを割り込んで、2010年5月以来の安値をつけた。北海ブレント原油先物は72.58ドルと、2010年以来の安値を付けている。

 この原油価格の下落もあり、日本の物価は上がりにくい状況が続くと予想される。日銀がいくら国債を発行額以上に買いあげようが、それで物価上昇に結びつくことは考えづらい。10月31日の日銀の異次元緩和第二弾はこの物価を意識したものといえるが、それで国債を買いあげてもほとんど意味がない。円安に誘導して物価高を狙った面もあるかもしれないが、それは為替市場次第になってしまう。

 CPIが日銀の物価予想に届くことは難しいからといって追加緩和を期待するのも無理がある。そろそろ日銀もリフレ政策で物価を動かすことは難しいことを認め、マネタイゼーションとも認識されかねない巨額の国債買い入れについては再検討することも必要ではなかろうか。

 物価が上がりにくい状況は日本だけではない。27日に発表されたドイツの11月のCPIはプラス0.5%と2010年2月以来の低い伸びとなり、前月のプラス0.7%から低下した。これを受けてドイツの10年債利回りは0.7%を割り込み過去最低に。フランスの10年債利回りも初の1%割れとなった。その背景にはECBの量的緩和による国債買い入れの期待があろうが、ドラギ総裁には日本の状況を説明した方が良いのではなかろうか。

 物価を上げるには量的緩和などより、実態経済そのものを回復させる手立てが必要である。金融政策を経由した一時的な通貨安政策などより、もう少し効果的な手段もあるのではなかろうか。中央銀行は国債への信認低下というリスクを増加させる一方、その効果はあまり期待できない政策を推し進めることについて、再検討すべきではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-12-01 10:56 | 日銀 | Comments(0)
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