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梯子を外された日銀

 10月31日に日銀が決定した量的・質的緩和の拡大(QQE2)は2012年11月のアベノミクスの再来を狙ったものとも言える。その意味では安倍政権へのフォローとも言えるものである。さらに日銀は安倍政権が2015年10月の8%から10%への消費税の引上げを決定できる環境を整えようと考えていた可能性がある。黒田総裁は消費税率が予定通り引き上げられることを前提に政策運営を進めていると主張していた。

 ところが政府はQQE2による円安株高の流れも利用し、解散総選挙の好機と捉え、そのために2015年の消費増税の延期を決定してしまった。むろん金融政策は日銀が決めることであるのと同様に、消費増税の決定は首相の判断となる。

 しかし、日銀と政府との間には、2013年1月の共同声明が存在している。これは日銀と政府は、お互いの役割を明確に認識した上で、それぞれが取り組むべきことをはっきりと示し、そのもとで、日銀は2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、政府は日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進するとしている。

 日銀は2013年4月に量的・質的緩和を決定し、国債を市場から大胆に買い入れることになった。これは日銀が国債を直接引き受けての財政ファイナンスと認識されかねない。財政ファイナンスでもマネタイゼーションでもないとするのであれば、政府が財政規律を守る姿勢を示すことが必要になる。

 消費増税は国の財政悪化を食い止めるひとつの手段ではあるが、財政健全化に向けた切り札的な役割ともなっている。それにもかかわらずQQE2を日銀が決定したあとで、政府は2015年10月からの消費増税の延期を決定してしまった。これは日銀にとっては梯子を外された格好となった、

 これに関して黒田日銀総裁は11月19日の記者会見で、何よりも重要な点は財政規律を守るという政府のしっかりした対応であるとし、政府も財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための努力、そのための取り組みを着実に推進していくとした上で、「中期財政計画」を策定し、そこに健全化に向けた数値目標も掲げられ、その達成に向けた取り組みを明確に示しているとしている。

 安倍首相は2015年10月からの消費増税の8%から10%への引き上げを18か月先送りし、2017年4月に実施するとしている。その際には再延期は考えておらず、消費税率10%への再増税先送りに伴う法改正で、経済情勢次第によって増税を停止できる「景気条項」を撤廃する方針を示している。これも財政規律を堅持する姿勢を示したものであろうが、消費増税を先送りすること自体、財政規律よりも経済政策を優先した格好となり、日銀が財政ファイナンスに近いことをしてしまっての歯止めを取ってしまった格好となる。

 これは非常に危険な状況を生み出すことになりかねない。これを受けて海外投資家からはバンザイノミクスとの造語も飛び出してきた。財政ファイナンスに突き進む日本を揶揄した言葉である。今回の消費増税延期とQQE2の組み合わせが、いずれ日本売りのきっかけとなる可能性は否定できない。

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by nihonkokusai | 2014-11-24 10:33 | 日銀 | Comments(0)
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