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賛成票を投じた宮尾審議委員の理由説明

 10月31日の日銀金融政策決定会合での追加の緩和策(QQE2)は、5対4という僅差で決定された。追加緩和に賛成したのは黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁、宮尾審議委員、白井審議委員であった。反対したのは森本審議委員、石田審議委員、佐藤審議委員、木内審議委員である。反対した委員は、これまでの金融市場調節方針を維持することが適当であるとしたと公表文には記されていた。

 今回のQQE2は、市場参加者にとってもサプライズとなった。一部に国債の買入れを技術的に引き上げる必要があり、そのために追加緩和を行うかもしれないとの観測はあった。しかし、マスコミが事前にリークすることもなく、ここまで大胆な追加緩和が決定されるのはまさに寝耳に水といった状況であった。

 このため10月31日の決定に際しても反対者の意見は納得できる。さらに執行部である総裁と副総裁がいろいろ画策しての追加緩和であったであろうこともわからなくはない。タイミングが重視されたであろうことも想像に難くない。ただ、問題は執行部に取り込まれたとみられる二人の審議議員である。

 10月はじめの会合では現状維持に賛成していたのに、わずかな期間で何が変わって追加緩和の必要性を意識したのか。特に二人が学者出身ということもあり、その説明を知りたいところである。ちょうど本日(11月12日)、QQE2に賛成したひとり宮尾審議委員が長崎で講演をし、その要旨が日銀のサイトにて公表された。

 宮尾審議委員の講演要旨を見る限り、景気や物価に対する見方にはあまり変化はない。むしろ経済の見通しについては前向きの循環メカニズムは持続し、供給サイドの改善を背景に、消費の基調的な底堅さも持続するとみている。

 さらに「本年夏場以降の原油価格下落については、実体経済には、企業収益、家計の実質所得の両面から、プラスの影響を及ぼすものと考えられます」と指摘している。ここは注意すべきポイントになる。

 なぜならば10月31日のQQE2を決定した最大の要因が「原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている」ためであった。実態経済にプラスに働いているにも関わらず、思ったように物価が上がらないため追加緩和をするというのは本末転倒ではなかろうか。

 宮尾委員は、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として作用しており、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある、と指摘した。

 「デフレマインドの転換の遅延」とはいったいどういうことなのであろうか。そもそも2013年4月の量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和により、デフレマインドを「転換させた」のではなかったのか。1年も経過してデフレマインドは一向に転換せず、まだ途中にあるというのは、そもそもの異次元緩和の意味があったのかということにもなりかねない。

 「わが国は長年にわたってデフレが続いてきており、米国のように予想物価上昇率がすでに 2%程度にアンカーされている国とは異なり、国民の物価感そのものを 2%程度に引き上げる途上にあります」(11月12日の宮尾審議委員の講演要旨より)

 その物価観を押し上げるには2倍の国債買入れで引き起こすというのが異次元緩和の日銀の説明ではなかったのか。「途上」とはどういう意味なのであろうか。

 「そのプロセスにおいて、仮に短期的であっても、実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、これまでの予想物価上昇率の好転のモメンタムを弱めるリスクがあると考えました。」(11月12日の宮尾審議委員の講演要旨より)

 これはつまり異次元緩和第一弾では、人々の予想物価を引き上げることはできず、簡単にそれが弱まってしまうという、異次元緩和以前の状態が続いているということなのであろうか。それでは、同じような緩和を行っても、円安や株高は起きても、人々の物価観には何ら影響を与えないということになるのではなかろうか。

 「日本では、過去のインフレ率の実績が人々のインフレ予想の形成に影響を与えるという「適応的な」予想形成メカニズムが相応に強いとみられる点も留意が必要です。」(11月12日の宮尾審議委員の講演要旨より)

 これも以前から指摘されていたことではあるが、そうだとすれば人為的にコストブッシュインフレを引き起こせばよいというものであろうか。そのために必要なのが円安というのであれば、追加緩和により物価だけ上がればよいということになりかねない。

 やや辛口の批評となってしまったが、10月31日のQQE2の理由説明にはかなり無理がある。宮尾委員の経済や物価の説明については違和感はない。特に景気や物価の見方に変化が生じたわけではなさそうである。しかし、金融政策の説明は上記のように矛盾する点が多くみられる。もし矛盾を感じていたのであれば、反対票を投じるべきではなかったろうか。

 政治的な配慮も金融政策には必要であることはわからなくもない(今回は裏目に出たが)。白川総裁から黒田総裁に変わってコロッと金融政策も全員一致で変化したのも致し方ないかもしれない。しかし、政策委員の一票は重い。自らの意思を通すことも政策委員としては必要なことではなかったろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-13 09:55 | 日銀 | Comments(0)
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