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中央銀行の金融政策とは何か

 中央銀行の金融政策とは何を目的に何をするものなのか。本来の金融政策は短期の金利を政策金利として、その金利の誘導目標値を上げ下げするものである。現在の日銀の政策金利は「無担保コール翌日物」と呼ばれる短期間の金利である。念のため、昔使われた「公定歩合」ではないし、その単語すらすでに使われていない。

 景気が良くなり物価が上がれば、日銀は政策金利の誘導目標値を引き上げ(金融政策)、政策金利に誘導するために市場から資金を吸収する(公開市場操作)。短期金利を引き上げることで、企業などからの借り入れを抑制させることになり、景気を冷やし物価を下げる。

 反対に景気が悪く物価が下がれば、日銀は政策金利の誘導目標値を引き下げ、政策金利に誘導するために市場に資金を供給する。短期金利を引き下げることで、企業などの借り入れをしやすくさせ。景気をサポートし景気回復により物価も上がる、というのが伝統的な金融政策である。

 ところが日銀が上げ下げする金利、いわゆる政策金利がほぼゼロとなってしまったらどうするのか。それが2000年代に入ってからの日米欧の中央銀行の大きな課題となった。日銀は1999年2月に政策金利をゼロとするゼロ金利政策を行った。

 政策金利はゼロ以下、つまりマイナスとすることは技術的には可能である。ユーロ圏の中央銀行であるECBも政策金利の下限となるものをマイナスとした。ただし、下限とかでなく政策金利そのものをマイナスにすることはあり得ない。

 ここで少し専門的となってしまうが、過去にあった政策金利のマイナス化について確認してみたい。

 2009年7月にスウェーデンの中央銀行であるリクスバンク(世界最古の中央銀行)は世界で初めてマイナス金利政策を実施した。預金ファシリティの金利をマイナス0.25%に決定したのである。預金ファシリティとは超過準備に利息を支払う制度である。ただし、この際は0.25%の政策金利に対し、0.5%上乗せしてロンバート貸出金利、0.5%差し引いて預金ファシリティ金利(その結果マイナス0.25%)を単純に決めただけのことであったようである。政策金利そのものはプラス0.25%であった。

 2012年7月5日にデンマーク国立銀行(中央銀行)はECBの利下げに合わせて、主要政策金利である貸出金利を0.25%引き下げ0.20%とし、譲渡性預金金利を0.05%からマイナス0.20%に引き下げた。 こちらも政策金利そのものはマイナスではない。

 ECBは2014年6月5日のECB政策理事会で追加緩和策が決定された。政策金利であるリファイナンス金利は0.1%引き下げられ、0.25%から0.15%となった。上限金利である限界貸出金利は0.4%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%し、マイナス金利となった。このマイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用されるとされた。

 これがいわゆるECBのマイナス金利である。さらに9月4日の政策理事会では、ECBは政策金利を全て0.1%ずつ引き下げ、リファイナンス金利を0.05%に、上限の限界貸出金利を0.3%とし、中銀預金金利をマイナス0.2%とした。

 これまでにあった中央銀行による政策金利のマイナス化と呼ばれる現象については、政策金利がマイナスになったのではない。現在の日米欧の中央銀行では、コリドー(corridor:回廊とか通路)と呼ばれる政策金利の上限と下限を設けている。つまり政策金利には、上限と本来の政策金利と下限の3つが存在し、その下限の部分が技術的にゼロを下回ってしまったのである。

 日銀も同様にコリドーを設けている。政策金利は「無担保コール翌日物」の金利である。上限となるのは補完貸付制度(ロンバート型貸出制度)における金利、ロンバート金利である(基準割引率および基準貸付利率)。補完貸付制度とは、あらかじめ定められた条件を満たす限り、金融機関が希望するときに、担保の範囲内で希望する金額を日本銀行から借り入れることができるという制度である。この金利は昔、公定歩合と呼ばれていた。

 下限金利となっているのが補完当座預金制度による金利である。これは日銀の当座預金と準備預り金のうち超過準備に付けられた金利である。2014年11月現在、上限となる基準割引率および基準貸付利率は0.3%、政策金利は0.1%(ゼロではない)、下限となる超過準備の利子も0.1%となっている。

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by nihonkokusai | 2014-11-10 09:43 | 中央銀行 | Comments(1)
Commented by タンス預金 at 2014-11-10 11:08 x
マイナス金利の狙いは、個人の預金者に支払う金利を稼がなければならない銀行が融資を増やさざるをえない→融資条件の緩和、ではないかと思いますが、先日ブログ主様が紹介されていたように、その預金者に支払う金利もマイナスになるとしたら、デフレマインドが旺盛な最中にタンス預金が増えるだけではないでしょうか?
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