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安倍政権にとって絶妙のタイミングでの追加緩和

 今回の量的・質的緩和(QQE)の第二弾は、日銀としてここは逃したくはないタイミングであったろう。原油価格り下落などから、消費者物価指数が日銀が目標としている2%どころか、1%割れの懸念が出てきた。このためその懸念を市場から催促される前に追加緩和で払しょくさせる必要性があった。加えてこのタイミングでの日銀の異次元緩和第二弾はアベノミクスと同様に、急速な円安株高を演出できると予想され、これは安倍政権に対する大きなフォローとなる。

 2012年11月の衆院解散を受けてのアベノミクス登場による円安株高もあって、日本の景気は回復し物価も予想以上に上昇した。2020年の東京オリンピックの誘致の成功などもあり、経済再生を表看板に掲げた安倍政権への期待は強く、それが内閣支持率にも表れていた。

 ところが2014年4月の消費増税後に景気は予想以上に落ち込み、物価の上昇もいったん止まった。そのアベノミクスの効果が薄れてきたところに、内閣改造後の閣僚辞任などもあり、得意の外交面でもこれといった成果がなかなか上げられず、安倍政権はレームダック状態に陥る懸念が出てきた。その安倍政権にとって最も重要視していた指標が株価であった。2012年11月のアベノミクスは株高円安によって引き起こされたものであり、起死回生を計るためには株価の上昇が必要とされた。

 その株価対策ともなりうる公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用比率の変更の発表は、たまたま(?)日銀の金融政策決定会合の日である10月31日に予定されていた。GPIFが10月31日に明らかにした改革案では、国内株は12%から25%へと大幅に増やし、外国株もそれまでの12%から。株式同様に割合を増やす方向が発表されたのである。

 このタイミングに黒田日銀総裁や日銀幹部が目を付けた可能性がある。10月29日には米国の中央銀行であるFRBが量的緩和策として毎月買い入れていた米国債やMBSの買入れ額をゼロとすることを決定していた。つまり量的緩和策を停止したのである。声明文での「相当な期間」との表現は残ったが、それは利上げ時期を先送りさせるものとは思えず、市場もFRBのゼロ金利解除を視野に入れつつある。そのタイミングで日銀が追加緩和を実施すれば、FRBと日銀の金融政策の方向性の違いがより顕著となる。金融引き締めに走る米国に対して、日銀が追加緩和を行うことになれば、強力な円安ドル高要因になりうる。そこにGPIFが運用で外国株のシェアを高めるとなれば、さらなる円安要因となりうるのである。

 10月31日の日銀の追加緩和は国債買入れの増額が中心となったが、これについてはいずれ増額し、買い入れる国債の年限も長期化する必要に日銀は迫られていた。1年物の国庫短期証券(TDB)あたりまですでにマイナス金利が発生しており、短期金融市場の需給が逼迫していた。日銀としてはいずれ国債の買い入れ枠を増やすとともに、買入れ年限の長期化が必要とされた。そこでちょうど良い機会とばかり、このタイミングでその技術的な変更を異次元緩和第二弾として打ち出そうとしたのが10月31日の日銀の追加緩和であったと考えてもおかしくはない。

 2012年11月の安倍自民党総裁によるリフレ発言をきっかけとしたアベノミクスはほぼ円安株高による効果であった。そのアベノミクスを復活させるには、やはり円安株高が必要となる。GPIFの運用比率の見直しやFRBのテーパリングとの相乗効果を狙うには、まさに絶妙なタイミングであったことがうかがえる。GPIFの運用比率の変更による国債売却の懸念もあるが、その分は日銀が国債買入れを増やすことで、債券市場対策にもなる。

 消えつつあったアベノミクスよもう一度、のような効果、つまり円安株高が意識されての今回の追加緩和となった。これについて消費増税に向けての下地作りとの見方もあったが、そうとは思われない。消費増税を意識するのであれば、今回のタイミングはあまりに早すぎる。むしろ追加の経済政策などとセットにした方が良いはずである。

 現実に安倍政権は消費増税を延期して解散総選挙に打って出るとの観測も出てきた。むしろこの環境を政府にうまく使われた可能性もある。日銀は少し先走り過ぎたのかもしれない。もし消費増税が先送りされるようなことになると政府と日銀の間に亀裂が走る可能性も出てきた。

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by nihonkokusai | 2014-11-09 13:19 | 日銀 | Comments(0)
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