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ドイツでは一部の個人の預金口座でもマイナス金利に

 11月6日付けの読売新聞電子版によると、ドイツのオンライン銀行が11月から大口預金に限り、預金額に応じて利息を付けるのではなく、顧客から利子を徴収する「マイナス金利」を同国で初めて導入したそうである。

 マイナス金利を導入したのはドイツ中部のチューリンゲン州の小規模行「ドイツ・スカート銀行」だそうで、同行での預金総額が300万ユーロ超の顧客で、貯蓄口座に50万ユーロ以上を預けていた場合などに金利として0.25%が徴収されるとか。

 中央銀行が政策金利の一部としてマイナス金利が発生したケースはあったが。民間の銀行が個人向けの預金にマイナス金利を適用するのは極めて稀ではなかろうか。もちろん日本の銀行でも金利が極めて低いため、時間帯によってはATMで預金をおろした際に手数料が発生し、結果としてマイナス金利となってしまうことはある。しかし、今回の場合は銀行がマイナス金利を課することになり、状況は異なる。

 ドイツはユーロ圏の国であり、中央銀行はECBとなる。そのECBは今年6月5日のECB政策理事会で追加緩和策が決定された。政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利である限界貸出金利は0.4%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となったのである。

 このマイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用されるとされた。

 これがいわゆるECBのマイナス金利である。さらに9月4日の政策理事会では、ECBは政策金利を全て0.1%ずつ引き下げ、リファイナンス金利を0.05%に、上限の限界貸出金利を0.3%とし、中銀預金金利をマイナス0.2%とした。

 6月の利下げでドラギ総裁は政策金利は「事実上」下限に達したと述べていたにもかかわらず、9月にまた引き下げ、今度こそ利下げはこれで終わりと強調していた。これはドラギ総裁としては量的緩和政策の導入をしたかったものの、ドイツ出身のメンバーなどの反対もあり、政策金利の引き下げなどで対応せざるを得なかったためとみられる。かなり無理をしていたことも確かであり、その結果、民間にもシワ寄せが来た結果となった。

 民間金融機関としては貸出や国債などでの運用とともに、預金の引き出しに備えてある程度の資金は中央銀行の当座預金に置くなり、短期で運用する必要がある。しかし、その金利がゼロ近くかマイナスとなっていれば。今回のように大口顧客の預金の利子をマイナスにせざるを得ないことも理解はできる。しかし、銀行の運用の源である預金はいらないとの政策は通常は取れないことで、この銀行はレアケースではないかと思われる。

 それではすでに1年物の国庫短期証券が一時マイナス金利となっていた日本でも、個人の預金でのマイナス金利はありえるのか。これについては絶対ないわけではないが、やはり銀行が預金の流出を招くようなことはしないのではないろうか。

 ECBと日銀は緩和目的は同じであっても、そのやり方が違うため、その可能性は極めて薄いといえる面もある。ECBはマイナス金利を課すことで、中銀の当座預金に置かれた資金を多少リスクをとっても他の商品で運用、例えば株式市場などでの運用を促そうとした。

 これに対して日銀は、当座預金の超過準備にはプラス0.1%の利子をつけている。これは日銀が市場から国債を買って、民間銀行は受け取った資金を日銀の当座預金口座に積み上げることを目的としているためである。現在の日銀の政策目標が、日銀の当座預金を含むマネタリーベースとなっている。これが膨らむとインフレ期待が強まる、と日銀は考えている。ECBは中央銀行から資金を逃がす策、日銀は中央銀行に資金を積み上げさせる策をとっている。これでも目的は同じで、ともに物価の上昇や景気の回復である。

 日銀の超過準備には0.1%という利子が課せられることで、日銀に口座がある一般的な国内銀行などでは、預金者にマイナス金利を課せる必要はない。ただし、今後、1年より長い期間の国債でマイナス金利が発生するような事態となれば、今回のドイツのように運用難を理由に大口預金者にマイナス金利を課す可能性がないわけではない。

 それでも民間銀行にとっては各種の決済などを含めて、預金を置いておくことで手数料収入が得られる面もある。企業にとっても預金にマイナスが課せられれば、他のマイナス金利でない銀行に資金を移し替えることが予想される。銀行にとって収益の源が預金である以上、日本での預金へのマイナス金利は考えづらいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-07 09:49 | 金融 | Comments(0)
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