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金融緩和は奇襲が大事だが目的がおかしくないか

 10月31日の日銀の異次元緩和第二弾は、5対4という僅差で決定された。日銀の金融政策は毎月1回(4月と10月は2回)開かれる金融政策決定会合で決められる。日銀の金融政策を決めるのは総裁ではないし、担当理事でもないし、首相でもない。金融政策決定会合は国会などと同様に委員会制なので多数決によるが、最終的に議長(通常は総裁)が多数の意見をくみ取る格好で議長提案を行って決定する。ある程度賛成多数で可決されるであろうとみてから議案が出されるため、それが否決されることは考えづらい。

 2008年のやはり10月31日の金融政策決定会合において、当日の白川日銀総裁は議長案として政策金利を0.2%引き下げ0.3%前後とすることを提出した。この表決は賛成4人、反対4人の賛否同数となった(民主党政権下の総裁人事のゴタゴタの影響で審議委員がひとつ空席となっていたので8人しかいなかった)。賛否同数となったため日銀法18条2項の規定に基づき議長を務める白川方明総裁が決定した。この際の賛成は白川総裁、山口副総裁、西村副総裁、野田審議委員。反対は須田審議委員、水野審議委員、亀崎審議委員、中村審議委員であった。

 さて今回の多数決の状況を確認してみると、追加緩和に賛成したのは黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁、宮尾審議委員、白井審議委員であった。反対したのは森本審議委員、石田審議委員、佐藤審議委員、木内審議委員である。反対した委員は、これまでの金融市場調節方針を維持することが適当であるとしたと公表文には記されていた。

 今回の異次元緩和パート2というかバズーカツーは、市場参加者にとってもサプライズとなった。一部に国債の買入れを技術的に引き上げる必要があり、そのために追加緩和を行うかもしれないとの観測はあった。しかし、マスコミが事前にリークすることもなく、ここまで大胆な追加緩和が決定されるのはまさに寝耳に水といった状況であった。だからこそ11月4日にドル円は114円台に、日経平均は17000円と急騰することになった。

 中央銀行の金融政策において、利上げなどの引き締め策は事前に市場に織り込ませ、市場の急落等は避けることが必要となる。その良い事例が今回の米FRBによるテーパリングにおける市場との対話にあった。やや試行錯誤した面はあったが、テーパリングを行っても債券、株式市場ともにそれによる市場への影響は極力抑えられた。

 それに対して金融緩和はサプライズのほうが効果的。特に市場への効果があることは今回の事例でもお分かりの通り。昨年4月の異次元緩和についても、すでに首相が日銀がリフレ策をやるぞ、総裁も俺が任命したぞ、という状況下、その実施の可能性はあった。ただし、黒田総裁は就任から日が浅く短期間で審議委員などの同意が得られるか疑問もあり、4月4日のタイミングは難しいとの見方もあった。それを日銀の理事などを中心に動いて行ったとされているが、これもサプライズとも言えた。もちろんその内容も市場は脅威した。

 今回も確かに振り返れば、ここを逃したくはないタイミングであったことは確かである。私ももう少し安倍首相や黒田総裁、日銀理事などの立場でものを考えていれば、追加緩和の可能性を考慮できたかもしれない。

 レイムダック化した安倍政権からの株価対策要請、原油価格下落などで思ったように期待が、ではなく物価が上がらない日銀、米国FRBはテーパリングを終了したばかりのタイミングであり円安ドル高に働きかけるまたとないチャンス。さらに消費増税への援護射撃にもなりうる。そして。GPIFの運用比率の変更とタイミング合わせての株価対策、国債対策ともなる。

 しかし、異次元緩和で物価が上がらないのにさらに異次元の緩和を大きくする意味があるのかという当然の疑問もあり、私自身、追加緩和という考えが及ばなかった。当然ながらこれは審議委員も同様であったのではなかろうか。だからこそ実務派とされる森本審議委員、石田審議委員、佐藤審議委員、木内審議委員が反対したと思われる。それに対して理論派というか学者出身の宮尾審議委員、白井審議委員は見事に執行部に取り込まれたのか、数の上では追加緩和を可能にできる状況が生まれた。

 サプライズとなり特に市場には大きな効果をもたらせた今回の日銀の追加緩和であったが、その目的が「円安株高と国債安定」という市場操作が目的であったように思われる。さらなる円安で物価には上昇圧力が掛かろうが、ここにきて原油価格はまだ下げている。果たして日銀の言うところの期待とは、株高や円安、さらに国債価格は安定してくれよとの期待が本音なのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-05 09:55 | 日銀 | Comments(0)
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