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米国の金融政策と米国債の関係

 10月28日、29日のFOMCにおいて、毎月の米国債とMBSの買入れ額を150億ドルからゼロとし、テーパリングを終了させる予定である。つまり量的緩和が解除される。

 FRBは米国債とMBSを大量に市場から買入れ、不動産市場の活性化や雇用環境の改善などを目的としていた。住宅ローン担保証券(MBS)と米国債を買い入れることで、米長期金利の低下を促し、住宅投資を促して、金利低下による景気への効果も意識され、結果としてFRBの目的のひとつである雇用の改善に結び付けようとしたものである。

 FRBの資産買入れは中央銀行のバランスシート拡大によるデフレ脱却を意図したものではない。しかし、結果とすれば日銀の異次元緩和と同じようなことをしている。治療目的は違うが、使用薬は同じであり、中央銀行の国債買入れはまさに万能薬と言えそうである(本当に効くかはさておき)。ユーロ経済とデフレ懸念払拭のため、ECBも日銀やFRBと同じようなことをしようと画策している。

 中央銀行による国債買入れがどのような効果を生んだのか。これは大きな課題であり、その検証はもう少し時を置いてからする必要があると思う。経済は中央銀行の金融政策だけで動くものではないため、その検証はかなり困難を極めることも確かである。

 ただし、今回のFRBの量的緩和第三弾と市場で呼ばれたものと、そのテーパリングの過程における米国債、つまり米長期金利の動向を比較することはできる。そもそもFRBの量的緩和の目的が長期金利の低下を促すものであったのであれば、その効果は果たしてあったのかどうか。それを確認してみたい。

 2012年12月12日のFOMCでは、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大する。MBS含めると月額850億ドルを買い入れることになる。また、国債の償還分の買入も行う。これが量的緩和第三弾のスタートとなる。

 2012年12月のFOMCで量的緩和が決定された日あたりでの米長期金利は1.7%近辺にあった。しかし、ここから長期金利は低下してはいない。むしろ上昇基調となり、2013年1月から2月にかけて2%近辺に上昇した。これは欧州の信用危機の後退が背景にあったと言える。

 2013年3月あたりから5月にかけての米長期金利は2%近辺から1.6%近辺に低下した。これはFRBの量的緩和がタイムラグを置いて効果を発してきたわけではない。2013年3月にはキプロスの財政不安による欧州の信用不安の再燃によるものであった。

 2013年5月あたりから今度は米長期金利が急速に上昇する。5月の1.6%近辺から9月には3%近くまで上昇した。これは5月のECBの追加緩和をきっかけに、欧州の信用不安が急速に後退したことや、5月22日にバーナンキFRB議長が証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘したことが要因とされる。

 ところが9月のFOMCでテーパリングの決定がなかったことから、米長期金利はいったん2.5%あたりまで低下する。その後、再びテーパリング開始との観測が強まり、FRBは2013年12月のFOMCで毎月の米国とMBSの購入額を850億ドルから750億ドルに減少させ、テーパリングを開始した。これを受けて米長期金利は再び2014年1月1日に3%近辺に上昇したが、ここがピークとなった。

 2014年1月には650億ドルに縮小。3月に550億ドルに、4月に450億ドル、6月17~18日に350億ドル、7月29~30日に250億ドル、9月16~17日に150億ドルとした。この間の米長期金利は総じて低下傾向となり、2.1%台にまで下げている。

 米国債もむろんFRBの金融政策だけで動くわけではないが、FRBは金融政策で米長期金利を低下させようとした。たしかに米長期金利は3%を超えて大きく上昇したわけではない。長期金利を抑え込むことには成功したかに見えるが、果たしてそうであろうか。

 テーパリングを開始しても長期金利は低下していた理由は何なのか。このあたりの関係を市場マインドなども併せて検証する必要があろう。これを把握してから、FRBのゼロ金利政策の解除に向けての市場の動向を読む必要も出てくるのではなかろうかと思う。

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by nihonkokusai | 2014-10-28 09:51 | 中央銀行 | Comments(0)
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