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企業と個人と市場参加者の物価観の違い

 10月2日に日銀は、短観における「企業の物価見通し」の概要を発表した。これによると、物価全般(消費者物価指数をイメージ、消費税など制度の変更の影響を除いて回答す)の前年比に関して、1年後はプラス1.5%、3年後はプラス1.6%、5年後はプラス1.7%となり、前回調査とまったく変わりがなかった。

 2日に日銀は「生活意識に関するアンケート調査」(第59回)の結果も発表している。このなかで、1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値はプラス4.8%(前回:プラス4.2%)、中央値はプラス3.0%(前回:プラス3.0%)となっていた。

 参考までに、QUICK月次調査<債券>の9月調査によると、CPIコア変化率(消費税要因を含む)は、平均値で2.33%、中央値が2.5%、最頻値が3.0%となっていた。7月調査はそれぞれ平均値で2.37%、中央値が2.6%、最頻値が3.0%、8月調査は平均値で2.28%、中央値が2.5%、最頻値が3.0%となっていた。

 8月中旬あたりから外為市場では円安ドル高が急速に進み、ドル円は102円台から110円台に上昇していた。しかし、この円安でも債券市場関係者や企業経営者などの物価観は大きく変化せず、個人は円安による影響も含め、物価の上昇を感じているようである。

 しかし、奇妙なことに、数字そのものは企業経営者、個人、債券市場関係者のあいだでは大きな隔たりが感じられる。1年後の物価を消費増税の影響を除いて、短観ではプラス1.5%、個人はプラス3.0%(中央値)としており、そして市場では消費増税の影響を加味してプラス2.5%(中央値)としている。

 この数字の振れの原因は、消費者物価指数そのものにもあると思われる。個人であれ、企業経営者であれ、債券市場関係者であれ、消費者物価指数がそもそもどのようなものなのか、具体的に知っている人は限られよう。債券市場関係者のなかでもエコノミストなどはその中身について理解しているかもしれないが、それ以外の参加者は漠然としたものでしか理解はしていないのではなかろうか。

 ラスパイレス法とか帰属家賃とか、それなりに専門的な知識も必要とされるが、そもそも外部からはわからない部分も多い。消費者物価の分析としては総務省より、予測としては日銀が最も力を入れているようだが、それでも正確性という意味では、3か月程度先の数字を予測できる程度とされている。

 個人や企業経営者、市場関係者の物価予想を引き上げれば、物価も上昇するというのが、いまの日銀の金融政策の大きな目的だそうだが、専門家ですら予測できないものをどのように予測するのか。このような調査結果をもとに物価予想が上がった下がったと認識することにどれほどの意味があるというのであろうか。

 これは当然、物価連動国債から求めた物価予想も同様である。こちらはもっと対象人数(物価連動債を売買もしくは値をつける人)が少ない上、需給も影響するなど指標として使うにはかなり問題が存在するものである。

 そもそも消費者物価指数の前年比の2.0%という数字そのものにも、特に何かしら根拠があるものではない。いわゆるグローバルスタンダードみたいなものを意識したものに過ぎない。日銀が物価を目標に向けて上げようとするのであれば、人々の物価観を上げることではなく、足元の物価を引き上げることが重要課題となるのではなかろうか。それを日銀が大量に国債を買入れて達成できるという理由が良くわからない。

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by nihonkokusai | 2014-10-06 09:07 | 日銀 | Comments(0)
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