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円安に賭ける政府と日銀

 ドル円のチャートをみると2012年11月のアベノミクスの登場をきっかけとした円安の流れが再び加速してきている。この勢いが続けば、チャート上は110円どころか、120円あたりまでの上昇もありうる。

 ドル円は2012年11月のアベノミクス登場により、80円割れから上昇し、2013年5月に102円台をつけていったんピークアウトした。その後、三角持合いのような格好となったが、2013年の年末にかけて上にブレークし、2014年の年初に105円台をつけ、ここでピークアウトする。その後、101円台から102円台あたりでの膠着相場が続くが、9月に入り再び膠着相場を離れて上に抜けてきた。月足チャートでみると、1998年8月の147円台をピークとした下降トレンドが終了し、あらためて上昇トレンドを形成するかといった動きとなっている。

 為替もいろいろな材料で動くが、チャートを意識したテクニカル的な要因で動くことも多い。チャートがトレンドの変化を示すとき、地合いそのものが変化してきていることがある。まさに今がそのようなときのように思えるが、そこを政府・日銀はうまく突いてきた格好となった。

 今回の円安のひとつのきっかけが、黒田日銀総裁の円安容認ともとれる発言であった。9月4日の記者会見において、黒田総裁は、円相場への質問に対して、為替レートの先行きなどについて特別なことを申し上げるつもりはありませんがと前置きしながら、「ファンダメンタルズの反映として、ドルが強くなっていくことは、何ら不思議でないと思いますし・・・為替レートがドル高・円安になっていくとしても、日本経済にとって特にマイナスということはないと思っています」と答えていた。

 日銀の追加緩和観測が強まったわけではないが、FRBのテーパリングの終了を10月に控え、日銀とFRBの方向性の違いも意識された円売りドル買いも入りやすい。そのようなタイミングで元財務官であり、為替に関してのスペシャリストであった黒田総裁が円売りを後押しさせるような発言を行った。

 さらに今回、日銀参与に任命された河合正弘東大特任教授が、「円安は日銀の物価目標達成に対してポジティブ。FRBの利上げでドル円が110円になることは自然」と具体的水準まで踏み込んだ発言をしていた。河合氏の経歴としては、東京大学名誉教授、元アジア開発銀行研究所(ADBI)所長等々あるが、2001年7月からは財務省の副財務官であった。当時の財務官は黒田東彦、現日銀総裁である。

 河合日銀参与の発言内容からも、円安が日銀の物価目標の達成にも効果的であるとみていることは確かである。これに対して岩田日銀副総裁は9月10日の講演で「円安が物価上昇をもたらすという関係は、必ずしも成立していない」と発言していた。これは黒田総裁の円安容認ともとれる発言に対してバランスを取ったとの見方もできなくはないが、意志の疎通をしていたというよりも、こちらは岩田副総裁の個人的な主張に過ぎない可能性がある。岩田氏の発言はひとまず置いておいたほうが良いかと思われる。

 9月11日には安倍首相と黒田日銀総裁が約5か月ぶりの会談を行った。ここで実際にどのようなやり取りが行われたのかは定かではないが、安倍政権としても消費増税後の景気の落ち込みもあり、再びアベノミクス、つまりは円安と株高の演出は望んでいることは確かといえる。ここで政府と日銀の為替に対する認識で共通したものができていたとしても何らおかしくはない。外為市場では密約説が出たそうだが、仮に密約がなくても、阿吽の呼吸でその方向性が示された可能性はある。

 日本が仮に円安策を再び取ったとして、これまで日本の円安策に釘を刺してきた米国サイドも今回は動きづらい。FRBが出口政策に向けて動いているためであり、そのための円安ドル高はある程度は容認せざるを得ない。昔、日本の円安政策に釘を指した張本人のひとりとされるブレイナード元財務官がFRBの理事になっているが、日本に対する非難はしにくいであろう。さらに今回の政府と日銀は、為替介入ではなくあくまで口先介入に止まっている。

 ドル円が今後、どのような動きとなるか。チャートが示すようにドル円は110円を超えて、さらに加速してくるのか。今回は確かに黒田総裁などからの口先介入がひとつの起爆剤となった。安倍首相との会談当日には黒田総裁はテレビにも生出演している。ここにきて講演等の回数も多い。

 もしかすると相場を動かせると黒田総裁は自負しているのかもしれない。しかし、もし相場を自ら動かせると考えてしまうと、いずれ壮大なしっぺ返しを食らうこともありうる。それは過去の債券市場でも何度か起きたことである。このあたりも注意すべきことではある。

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by nihonkokusai | 2014-09-17 09:28 | 日銀 | Comments(0)
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