安倍改造内閣で相場は動くのか
サプライズがあったとすれば、谷垣氏の幹事長就任か。しかし、結果として幹事長職から外した石破氏を入閣させたことを含めて、党内に影響力のある谷垣氏と石破氏を取り込むことが最優先であったとみられ、来年の自民党総裁選を見据えてのものと見て良いのかと思う。
財政再建派の谷垣氏が自民党幹事長に就任することにより、10%への消費増税にも影響が出るのではとの見方もある。実際に谷垣氏は就任後の会見で、10%への消費増税について、法律に沿って来年10月から実施することが基本との認識を示していた。しかし、首相の消費増税判断に谷垣氏の存在が何かしら影響を与えることは考えづらい。それよりも財務相含め主要閣僚の顔ぶれはほとんど変わっていないこともあり、消費増税判断についてもこれまでの意向が反映されたものとなろう。つまり7~9月期の状況などを見て判断することになる。
塩崎氏の厚生労働大臣の就任についても、市場では期待がやや先走った感があった。すでにGPIFが国債偏重の投資から株式などのリスク資産に資金を振り向けることは、首相の意向もあり、ほぼ既成事実化している。誰が厚生労働大臣に就任しようがその流れを変えることはできなかったように思われる。
地方重視、女性の活用と言うものの、来年の統一地方選挙をにらんだものであろう。効率からいえば地方よりも都心重視のほうが理に適っていると思うが、それでは票は取れなくなる。国会議員の女性の比率に比べて、内閣の女性比率を大幅に高めたが、それもあくまで数をアピールしているようにしか見えない。これまで女性が登用されなかった見えない障壁のようなものが存在し、そのひとつが議員の女性シェアの低さもあるのであれば、このあたりを意識する必要もあるのではなかろうか。
今回の内閣改造による市場への影響としては、あまり大きなものはない。そもそも主要閣僚は留任しており、これまでの内閣のスタンスが変わりそうな要因はない。ただし、すでにアベノミクスという魔法が切れかかっており、市場はこのあたりにも懸念というか、期待を持っている可能性はある。
安倍政権の登場をきっかけに円安・株高の動きを強め、物価も上昇してきた。ところが円安・株高の動きは鈍りつつある。さらに円安による日本経済に対する影響も過去とは異なってきていることも明らかになってきた。海外勢の仕掛けでは円売りと日本株買いがセットになっていたが、現実には円安になっても昔ほど日本経済が潤うわけではない。このため株価対策にGPIFなどをもってきたと思われるが、これもすでに材料としては消化されつつある。この状況下で海外要因による影響はさておき、国内要因で株価を持ち上げられるほどの材料が果たして改造内閣にあるのかは極めて疑問である。
債券市場に対しても影響が出ることは考えづらい。日銀の金融政策が改造内閣により影響を受けることもないと思われる。当面は国内要因よりも、ECBの動向などを含めた海外要因に目を向けてくると思われる。
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