牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

正常化への試金石、イングランド銀行

 8月13日にイングランド銀行は四半期インフレ・レポートを公表した。このなかで、賃金の上昇が加速するようであれば、引き続き来年初めに利上げに踏み切る構えであることを示唆した。ただし、賃金の伸びが弱ければ、最初の利上げを先送りする可能性があることも指摘していた。

 前回の報告にあった「利上げを実施する前にスラックを一段と解消する余地がある」との部分は削除され、スラックが想定より急速に解消されつつあるとの指摘もあった。MPCが政策金利を過去最低の0.5%から引き上げ始める際、その利上げペースは段階的になるとの方針もあらためて示された。

 カーニー総裁はレポート公表後の会見において「地政学的リスクが強まったほか、ユーロ圏では構造改革が継続中で域内成長は緩やかと予想される」とし、「失業率が急激に低下したのに、賃金の伸びは極めて弱い」と発言した。

 この四半期インフレ・レポートとカーニー総裁の発言を受け、市場では早ければ年内にも利上げかとの観測が後退し、その可能性は来年初めとの見方が増えたようである。これを受けて13日の外為市場ではポンドが売られ、ロンドン株式市場は上昇、英国債は買われた。

 英国債が買われたのは、米国債やユーロ圏の国債が買われたためとの見方もできそうだが、むしろ英国の利上げ時期予想の後退が影響し、7月の米小売売上高を受けてFRBの利上げが遠のくとの見方も相まってのものかもしれない。

 個人的にはイングランド銀行の年内の利上げの可能性はあるかとみていたが、今回のインフレ・レポートや総裁会見で示されていたように、来年はじめとなる可能性が高そうである。もちろん、そのための条件として賃金の行方が大きなポイントになる。インフレ・レポートでは、今年10~12月の伸び率が前年同期比で1.25%前後とし、5月時点に予想した2.5%から引き下げた。

 ただし、スラックが想定より急速に解消されているという状況は、利上げにむけた環境が整備されつつあるとの見方も可能か。賃金の上昇はついてこないが、スラックが解消しつつあるというのは日本も同様の状況にある。

 今後の日米欧の中央銀行の金融政策の行方を見る上では、このイングランド銀行の動向を注目する必要がある。まず先陣を切って出口に向かうのが、イングランド銀行であると思われるためである。世界的な危機の連鎖において、大きな時間稼ぎの役割を果たした日米欧の中央銀行が、正常化に向かえるのかどうか。イングランド銀行の動向がまず試金石となる。

 FRBはすでにテーパリングを行っているが、それは出口政策の仕上げとなる利上げに向けての準備段階といえる。2006年の日銀の量的緩政策解除から、さほど時を置かずにゼロ金利政策を解除したのも、出口の仕上げがゼロ金利政策であったためである。これで非伝統的手段から伝統的手段に戻ったということができる。

 イングランド銀行が利上げを決定し、そのあとFRBも利上げの決定が可能となるのか。ここにきて地政学的リスクも出ていたが、それよりもユーロ圏の景気減速なども気になるところ。ドイツの長期金利が過去最低水準を更新し、1%を割り込みそうな勢いとなっていることもそれを示している(8月13日に1%割れとなった)。このあたりの動向も今後は注意深くみておく必要がありそうである。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-08-15 09:11 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー