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日銀の準備預金(超過準備)に利子が付く理由

 7月24日の白井日銀審議委員の講演の邦訳が日銀のサイトにアップされた。現在の日米欧の中央銀行の金融政策について、頭を整理するには良い資料かと思われる。もちろん予想インフレ率に関することなどやや疑問が残る部分はあるものの、今回はこの講演で触れていた「準備預金へのマイナス金利適用」との部分をピックアップしてみたい。

 ECBは6月の理事会で預金ファシリティに適用する金利をマイナス0.1%へ引き下げ、「所要準備を超える部分」(超過準備)に対しても同じくマイナス0.1%の付利を適用した。

 これに対して、FRBと日銀は、各々0.25%と0.1%のプラスの付利を超過準備に適用している。イングランド銀行は、準備預金に0.5%のプラスの金利を適用している。

 白井委員は、中央銀行がこのようにプラスの金利を支払っている理由について説明している。たとえば、マイナスの金利であれば、銀行間市場が縮小して金融機関が必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる点を指摘している。

 これについては、いざとなれば日銀による資金供給がそれをフォローするとみられる。ただし、銀行間市場そのものがマイナス金利により機能が低下する可能性はある。これは反対に日銀が大量に資金供給を行って資金がジャブジャブになった際にも起こりうる。むしろ、日銀の超過準備の付利は、2001年から2006年にかけての量的緩和時代に短期金融市場が機能不全に陥った。このため、その対策として日銀は現在の超過準備の付利を行ったとも言える。

 付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれ、プラスの金利を維持すれば市場金利の変動は小さくなると考えられる、との白井委員は指摘している。つまり銀行は日銀の当座預金に置けば、超過準備の部分は0.1%で運用できることになる。このため市場から国債等を買い入れるにあたり、運用利回りが0.1%以下のものであれば、それよりも日銀の当座預金の置いていた方が金利が高くなり、0.1%が運用における金利の下限となり、それ以下での取引はありえない、との理屈になる。

 ところが、現実には2年国債の利回りが0.065%と0.1%を下回るような状態が続いている。これにはいくつか理由が存在する。ひとつは内外を問わずすべての金融機関というか資金の運用主体が、日銀に当座預金を持っているわけではないことがあげられる。0.1%の超過準備を使えるのは一部の金融機関となる。さらに国債には担保需要などがあるため、そういった需要の強さにより0.1%以下で購入せざるを得ない面がある。

 中央銀行は市場金利を大きく変動させることなく銀行間市場に十分な流動性を円滑に供給し、バランスシートを拡大する量的緩和政策をし易くなるという利点があると、白井委員は指摘した。

 たしかに日銀の資金供給によって金利が大きく変動することはない。もちろん多少の振れはあるものの、そもそもが金利がミクロ状態にあり、変動したとしてもその幅は限られる。ここで注目すべきところは、あっさりと説明している「バランスシートを拡大する量的緩和政策」の部分であろう。日銀が超過準備の付利を残しているのは、日銀のバランスシート拡大のためと言える。日銀のバランスシートが拡大すれば物価は上がるという理由の元、行っているのがQQEであったはずである。

 これに対して、ECBは真逆のマイナス金利政策を何故、導入したのか。これについては、為替相場の減価や金融機関の貸出金利の低下等を期待する見方があると白井委員は指摘している。そもそもアベノミクスは円安・株高に誘い込むことが大きな目的であったはずであったが、ECBは為替政策のためマイナス金利を導入した。バランスシートの拡大とマイナス金利、果たしてそれは為替だけでなく物価にもどのような影響を与えるのか。

 このように準備預金への付利だけを見ても、日銀とECBは全く異なった政策を講じている。これはつまり極言すれば、中央銀行が刺激を与える政策を取れば良い方向に向かうという漠然とした期待が存在しているかのように思われる。白井委員はこの講演でレジームチェンジとの言葉を使っている。日銀のQQEで果たして本当にレジームチェンジが起きたのか。たまたまタイミングが良かったのか。このあたりの結果については、もう少し様子を見る必要があろう。

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by nihonkokusai | 2014-07-29 09:33 | 日銀 | Comments(0)
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