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黒田日銀総裁とイエレンFRB議長の道案内

 7月15日の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を全員一致で決定した。7月は展望レポートの中間評価を行うが、4月に比べて今年度の実質GDPが0.1%下方修正された。消費増税による落ち込みがやや想定より大きいとの見方とも取れるが、これによる市場への影響は限定的となった。

 黒田日銀総裁の記者会見では、夏場に向けた消費者物価指数(除く生鮮食料品)の行方に質問が集まった。6月23日の黒田総裁の講演の中で、「これから夏場に向けては、前年比プラス幅が一旦1%近傍まで縮小するとみられます」との発言があったためである。近傍との表現を使う場合には、その前後という意味合いが強い。つまり、1%近傍と言う表現には1%割れも想定しているとみられたことで、そこに質問が集まった。

 別に1%を割れたといっても、1%という数字に何かしら意味があるものではない。それで自動的に追加緩和を行う必要もない。しかし、何故か1%割れにこだわりがあったようで、それに対して黒田総裁は夏場に消費者物価指数のプラス幅が縮小しても1%を割ることはないと明言した。

 日銀の特に足元の消費者物価指数の予測は優れているとされる。ましてや、現在日銀は物価目標を掲げている以上、最も重視している経済指標であり、黒田総裁の今回の発言は日銀の調査結果を意識したものと思われる。円安やエネルギー価格による押し上げ要因が後退し、さらに携帯電話料金の改定の物価押し下げもあるが、ガソリン価格の上昇などが相殺するとの見解も示した。1%台前半での推移が続くとの日銀の読みに変化はないことになる。

 問題となるのは夏場以降の物価の行方となる。日銀は再び2%の目標に向けて上昇するとしており、そのシナリオ通りに進むのか。これまでの物価の動きの予想は民間よりも日銀の予想の方が近い結果となった。さらに日銀としては予想通りの緩やかな上昇が好都合である。物価が上がらなければ追加緩和を要求されやすくなるが、急速に2%に近づくと出口が意識されてしまうためである。

 FRBのイエレン議長は15日に上院銀行委員会で議会証言を行った。このなかで、労働市場には著しいスラックが依然見られ、インフレ率はなお当局の目標を下回っているとし、政策金利についてはテーパリング終了後も相当な期間、低水準で据え置かれる公算が大きいとした。ただし、労働市場の改善が予想より速いケースについては、早期利上げの可能性についても言及していた。

 日銀の黒田総裁には近傍の意味が問われたのと同様、イエレン議長の発言のなかでは「相当の期間」の意味が問われる。仮に現在のような環境が続くとして、相当な期間とはどの程度を考えているのか。まったくシナリオ用意されていないわけではなかろうが、それをぼかすことによって市場に対し不安や期待が発生することを防いでいる。相当な、との表現とともに、早期の利上げの可能性についても言及することで、バランスを取るというより、ある程度の裁量の余地があることを示し、市場に具体的な時期を想定させる材料を与えないようにしていた。

 地政学的リスクを含めてのリスク要因は多々あろう。しかし、過度な金融緩和政策が必要になくなりつつあることも確かである。15日発表された英国の6月の消費者物価指数は前年比1.9%上昇と予想を上回った。日欧米の中央銀行のなかで、真っ先に出口政策を実施してくるのがイングランド銀行となろう。年内の利上げの可能性も強い。10月にはFRBはテーパリングを終了させる。イングランド銀行の利下げが実施されれば、今度はFRBの利上げも市場では意識されよう。相当な期間との言葉は、金融危機時には1年以上との意識があったかもしれないが、現在の平時では半年程度だとしても相当な期間との表現になり得るのではなかろうか。正常化への道筋は待ったなしとなれば、それほど時を置くこともむしろ避けることも予想される。

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by nihonkokusai | 2014-07-17 09:41 | 日銀 | Comments(0)
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