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ハイパーインフレの防止はインタゲで可能なのか

 日銀の岩田副総裁は26日の講演で、「いざ金融緩和を止めようと思っても、金融市場や政府からの圧力がかかるため、なかなか止められないのではないか。そうすると、結局ハイパーインフレになってしまうのではないか」との懸念の声に対して、インフレ目標政策を採用していることが有効に働きます、と述べている。

 さらに岩田副総裁はインフレ目標政策について、「将来のインフレ率についての具体的な数値目標を掲げて、それを上回るインフレにもデフレにもしないことを約束する仕組み」であるため、デフレに対してもインフレに対しても有効に働くと指摘している。

 ここで注意すべきことは、ハイパーインフレといっても、どのような状況を示すのかをはっきり指摘していないことにある。岩田副総裁は日銀がインフレ目標を採用している以上、2%近辺での物価は安定し続けるとの認識なのであろうか。

 インフレ目標とかインフレーション・ターゲティングと言われているものは、物価上昇(インフレ)率の目標値(または範囲)を設定・公表して、その達成に向けて中央銀行が金融政策運営を実施するという金融政策の「枠組み」である。

 1931年から1937年までスウェーデンで物価水準目標政策を採用したが、これを除くと過去にインフレーション目標を採用したのは、1988年4月のニュージーランドが最初と言われる。

 岩田副総裁は「日本ではデフレからの脱却の手段として議論されることの多いインフレ目標政策ですが、もともとは 1980年代のニュージーランドなど、高インフレに悩んでいた国々によって採用された政策」であるため、高インフレにも有効との認識である。

 FRBのインフレ目標らしき政策に法的拘束力はなく、明確なコミットメントもないため、英国のインフレ目標とは異なるものである。ECBは物価安定の数量的定義を示しながらも、インフレ目標を採用していない。これは、ユーロ圏という新しく不均一かつ構造の変化の激しい経済圏において、インフレ率だけを見て金融政策を行うことにはそもそも無理があるためとされた。

 中央銀行は物価をコントロールできるのかという根本的な問題があるが、日銀は昨年の量的・質的緩和導入により、物価は順調に上昇してきたように見える。岩田副総裁の講演資料にもある物価の推移をみてみると、コアCPIは昨年3月の前年比マイナス0.5%を底に、ここにきて1.3%まで上昇している。昨年4月の異次元緩和の効果との見方もできよう。ところが、コアコアと呼ばれる食料とエネルギー価格を除いたものは、2月のマイナス0.9%が底となっている。物価は異次元緩和以前に上昇する地合は出来ていた。

 英国の消費者物価は昨年6月に前年比プラス2.9%まで上昇し、目標の2%から乖離していたが、ここにきて今年4月がプラス1.8%と目標近くに収まっている。インフレ目標が効いている格好に見えるが、イングランド銀行はこの間、物価を安定させるために何かしていたであろうか。

 2%という物価の目標数字は、グローバル・スタンダードに見えるが、その数字に何かしら意味があるものではない。2%以下がデフレで2%以上がインフレというようなことも特に定めがあるわけでもない。

 ハイパーインフレが第一次大戦後のドイツ、第二次大戦後の日本、さらに2008年あたりのジンバブエのインフレを示しているものとすれば、確かにそれが起きる可能性は高くはない。

 ただし、問題はインフレ目標で高インフレも抑えられるとの自信を示すことではなく、何故にハイパーインフレを懸念する声が出ているのかにあろう。簡単に言ってしまえば、ハイパーインフレのような事態が発生した際には、それは日銀券や日本国債に対する信認失墜への懸念が根幹にあるはずである。それによる通貨や国債の暴落が発生してしまった場合には、金融政策で抑えられるような次元の問題ではなくなっている。

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by nihonkokusai | 2014-05-28 08:03 | 日銀 | Comments(1)
Commented by 同感 at 2014-05-28 09:23 x
危機時のギリシャ通貨がドラクマ(独自通貨)であったら、信用失墜により通貨量の増加なしでも通貨は売られ(輸入物価上昇によるコストプッシュ・・・①)、また基本的に通貨発行国の発行体格付けは当該通貨建て債権の発行体格付けのトップラインになるものらしいので、ドラクマ建て債券を多く保有するギリシャの金融機関は自己資本毀損の嵐に見舞われ(→信用不安による資金調達コストの上昇・・・②)。①及び②により生産活動は停滞し減少した通貨価値に合わせるように経済も縮小していたのでは?勿論①も②も起きてはいるでしょうが今程度で済んでいるのはユーロに加盟しているからだと想像します。
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