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2003年の債券相場の暴落要因を振り返る

 債券市場はここにきて膠着感の強い相場が続いている。10年債利回りは0.6%近辺、債券先物は145円近辺での小動きが続いている。膠着相場が続いたあと相場が大きく動き出すことはある。債券市場ではその典型的な事例として、2003年のVARショックと呼ばれた膠着相場からの急落があった。

 2003年の債券先物の日足データを、手元の集計資料から引っ張り出して眺めてみたところ、この年の3月20日に先物は日中に86銭も動いたあとは、4月10日に65銭動き、その後は10銭程度からせいぜい30銭程度の値幅が続き、6月18日に74銭動いて、19日には1円82銭も動いていた。

 この年の相場を見る上でのひとつのポイントとなるのが、日中に86銭も動いた3月20日である。この日ふたつの重要な出来事が起きていた。米国のブッシュ大統領がイラクへの攻撃開始を発表した。さらに速水優総裁の任期満了に伴い福井俊彦氏が日本銀行総裁に就任したのである。

 就任した福井総裁は就任間もない3月25日に臨時の金融政策決定会合を開催した。この目的のひとつは行動を起こすことによって政府からの信認を得ようとしたものと思われた。福井総裁が就任した3月20日のイラク開戦で市場がやや動意を見せていたことも影響していたともみられる。ただし、臨時の会合を開催したにもかかわらず、その結果は現行の政策を維持することを全員一致で決定し、4月1日以後の郵政公社の発足に伴い当座預金残高目標を17~22兆円程度に引き上げることなどが決定された。

 4月20日の金融政策決定会合で日銀は金融調節の主たる操作目標である日銀当座預金残高の目標値を、これまでの17~22兆円程度から22~27兆円程度に引き上げることを決定した。

 2003年5月のりそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めたのである。

 5月20日の金融政策決定会合で日銀は金融調節の主たる操作目標である日銀当座預金残高の目標値を、これまでの22~27兆円程度から27~30兆円程度に引き上げることを決定した。

 6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。

 この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、日銀の量的緩和策の拡大も背景に必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出したとされる。

 しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなり、6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手投資家が超長期国債の購入を手控えたことをきっかけにして、債券相場が急落したのである。

 この債券相場の急落の背景としては、株価の上昇とそれを裏付けるような好調な経済指標が出てきたことで、景況感の変化によるものも大きかった。しかし、下げを加速させたのもVARであった。債券急落に伴い変動幅が今度は異常に大きくなり、銀行のリスク許容度が急速に低下。必要以上に売りを出さざるを得なくなったことで、下げが加速されたのである。

 2003年6月の債券暴落は相場の行き過ぎと、その要因となったメガバンク主体の予想以上の買いがあった。2012年11月にそれまでの円高から急反転し円安となった際と同様にポジションの偏りがあり、それにより相場が一気に崩れた。そのきっかけとなったのが、6月17日の20年国債の入札であった。

 今回の債券相場の膠着要因をみてみると、それを演出しているのはメガバンクとかではなく日銀である(メガバンクはむしろ国債残高を落としている)。さらに2003年のVARショックの経験を踏まえて、超長期債は20年債が1.4%台、30年債は1.7%近辺となっており、イールドカーブのフラット化は2003年当時と比べればそれほど進んでいない。つまり反動が起きる要因となるような買い過ぎといったものが存在していない。この点をみると、債券相場が大きく崩れる要因が今のところは見当たらず、それを演出する需給要因も存在しないようにみえる。ただし、買い過ぎているのは日銀であることを考えれば、相場の大きな変動もきっかけは日銀となることが予想される。

 債券先物は昨年12月30日に日中値幅が51銭となって以来、50銭を超える値幅は生じていない。結論からは2003年と現在では債券の需給を含めて状況が異なっているため、あまり参考とはならない。しかし、相場はいずれこのような急変が起こりうる。その備えとしてこのような事例を探っておくのも必要かと思われる。


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by nihonkokusai | 2014-04-23 09:03 | 債券市場 | Comments(0)
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