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予想インフレ率を探す日銀

 日銀の黒田総裁は、講演でデフレから脱却するためには「インフレ予想への働き掛け」が必要であると発言している。人々の間に「物価は上がらない、むしろ下がるものだ」というデフレ予想が生まれ、デフレ予想自体が自己実現的に物価の上がりにくい経済を作り上げてしまったとしている。そもそもデフレ予想が生まれた背景は何であるのか。それは日銀の金融政策だけが原因であったのかといった問題は、ここではさておき、そもそもインフレ予想、デフレ予想なるものとは何であるのか。

 人々の将来の物価に対する予想という、かなり曖昧で漠然としたものを操作しようとしているのが、現在の日銀の異次元緩和である。その漠然としたものを数値で示せばわかりやすいとばかり、日銀の岩田副総裁はかつてから予想インフレ率を示すものとして、日本の物価連動国債のBEIのグラフを使っていた。そもそも新規発行が停止中であったことで10年債ながら残存5年程度の既存の物価連動国債の流動性はあまりに低かった。昨年10月よりあらたに物価連動国債の発行は再開されたが、発行額はまだ6千億円程度しかない。そこから導き出される数値に何らかの意味を取りだそうにも無理がある。それ以前に人々のインフレ予想と言いながら、物価連動国債から見いだされる予想インフレ率とは、それでなくても債券市場関係者という限られた世界の人間のなかの、さらに一部の市場参加者のたまにつける売買(気配?)によるものである。

 このあたりも意識されてか、日銀はここにきて違うものから予想インフレ率を見いだせないかとしているようである。その動きのひとつに4月1日に発表される日銀短観から新たに加わる企業の物価見通しがある。調査方法としては、従来の日銀短観の業況感、事業計画に続く3番目の質問として、1年後、3年後、5年後の「販売価格見通し」と「物価全般の見通し」の2種類について、具体的な上昇(下落)率を聞くそうである。この物価見通しについては基本的には消費増税の影響を除いた回答を要請しているとか。(ロイター)

 標本数からみてBEIに比べるとより多くの予想値が集まるものと思われるが、それでもこれは企業経営者が経営計画等を立てる上での物価見通しであり、ある程度のバイアスも掛かりやすい。参考数値としては面白いものとなるかもしれないが、これが人々の予想インフレ率の数値として用いるにも無理があろう。この調査は、黒田総裁が2%の物価目標を掲げる以前の2年程前から議論されてきた調査だと、日銀は説明しているが、何故、このタイミングで始めたのであろうか。

 そして日銀は27日に「家計のインフレ予想の多様性とその変化」とするレポートを公表した。ここでは「インフレ予想は予想する主体によって様々であるという基本的な特性には、必ずしも十分な関心が払われてこなかった。」とのコメントがあった。日銀は当然ながらこの点は認識しているようである。さらに日銀が4半期ごとに実施している「生活意識に関するアンケート調査」の集計結果を利用し下記のようなコメントをしている。

 「5年予想の分布は、「物価安定の目標」を認識している家計の方が、2%を中心に鋭く尖った形状となっている。一方、同目標を見聞きしたことのない家計は、予想分布の山が低く、その分、両裾が相対的に厚い。こうした現象は、金融政策に関する情報発信が、家計の多様なインフレ予想を2%に収斂させる役割を果たしている可能性を示唆している。」

 ちなみにこのアンケート結果からは、日銀が消費者物価の前年比上昇率2%の目標を掲げていることを知っているとしている人は全体の3割に過ぎず、さらに見聞きしたことがないとの回答が4割近くいた。

 もし私が金融市場とか日銀の金融政策についてさほど関心はなく、それでもニュースとかで、日銀が大胆な金融緩和で物価を上げようとしている。実際に円安などによる影響で日常品の値上がりとかガソリンの値上げもみてきた。そうであれば、日銀からきたアンケートでは、日銀のいうところの2%という数値を意識して記入した可能性がある。これがインフレ予想の引き上げそのものだといわれれば、そう取れるかもしれない。しかし、書いた本人は2%という数字に何かしらの意味を見いだしているわけではない可能性もある。このようなアンケート結果からインフレ予想を無理矢理導きだすこともかなり無理がある。インフレ予想とはあくまで漠然としたものであり、それを数値化することそのものが実は困難なものであり、いうなれば相場の地合みたいなもので、感覚として捉えるしかないものなのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-03-30 11:52 | 日銀 | Comments(0)
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