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危機を記憶ではなく記録として残す必要

 金融市場の動きは非常に気まぐれである。市場参加者のポジション状態や心理状態に動かされやすく、弱いところを突いて動かそうとするヘッジファンドなども存在し、相場変動を加速させるアルゴと呼ばれるアルゴリズムによる機械的な取引も存在する。

 市場参加者のポジションが大きく傾くことは、バブルとか金融恐慌などと呼ばれる。買いが買いを呼ぶ、売りが売りを呼ぶ、そんな相場は大なり小なり存在し、動きが派手になると百年に一度の大相場、百年に一度の金融危機などと呼ばれることもある。

 大きな動きが来るときには、そのきっかけとなる何かしらの材料が存在することが多い。たとえば1820年代のイギリスでの金融危機の発端のひとつが新興市場ブームであった。また1880年ごろから南米を対象とした投機熱が再び起こり、特にアルゼンチンに投資資金が向かった。ベアリング商会は大量のアルゼンチン政府債券を保有し、倒産しかねない事態になり、イギリス政府とイングランド銀行の介入により倒産は回避されたもののブームは終焉し、1890年の「ベアリング恐慌」を引き起こした。

 1920年代のアメリカでの強気相場も、南アメリカの債券に対する投機熱に続いて起きたものであった。1929年の世界恐慌はそれまでの投機熱の高まりによるバブル的な動きの反動が大きく、1929年10月24日のニューヨーク証券取引所での株価の大暴落で、世界的な金融恐慌を引き起こすことになる。大恐慌の時代に南アメリカの債券はすべて債務不履行となっていた。

 1990年代にも新興市場向けへの投資が活発化した。1990年後半には米国を中心にITバブルが発生した。1997年のアジアの通貨危機をきっかけにロシアやブラジルなどに飛び火し経済混乱を招いた。新興市場ブームは2000年代にも生じる。

 このような過去の歴史があり、今回のウクライナ問題によるロシアの動向、さらには中国の経済動向などが注目されてはいるが、いまのところパニック売りを引き起こすような状況とはなってはいない。

 日本でもバブルや恐慌は何度となく引き起こされていたが、有名なものとしては1927年の金融恐慌がある。3月14日に片岡蔵相が「東京渡辺銀行が破綻した」と発言し、この片岡蔵相の発言により一般預金者の不安が増長され、東京渡辺銀行やその関連銀行のあかぢ貯蓄銀行が取付に合い、休業に追い込まれ、その後他の銀行にも取付が波及したのである。この際、短期間に大量の日本銀行券が市中銀行に対する預金者からの預金払戻し請求などに応じるために発行されたことから、銀行券の印刷が間に合わず、やむなく裏面が白紙の200円の高額紙幣が発行されたことも有名な話である。

 上記の片岡蔵相の発言をきっかけとして恐慌は、すでに市場で不安心理が働いていたところに火に油を注ぐ格好となった。相場も行き過ぎがあると、そのしっぺ返しがくる。市場が価格変動以外の要因で不安心理が高まると、何かしらのきっかけでパニック的な動きが誘発されることもある。

 欧州の信用危機のきっかけとなったギリシャは現在、国債発行再開に向けて準備を進めているそうである。欧州の危機は去ったと言えるが、これはいったい何が原因でどのような事態が引き起こされたのかを確認しておく必要がある。

 別に犯人捜しをするわけではなく、ギリシャの財政状態の隠匿、格付け会社による格下げ、ユーロというシステムそのものに内在した不安要因など、ひとつひとつ吟味してどのような経緯で市場が動き、何をきっかけに沈静化してきたのか。不安が高まり、その不安が少しずつ解消されていく様子をいまならば記憶ではなく記録として残すこともできるし、その必要もあろう。

 気まぐれな相場の動きを実感のあるうちに残しておくことは今後の同様の事態に対処するために必要なことと思われる。これは日本も他人事ではない。むしろ日本発の急激な相場変動が起きる可能性も否定できない。そのリスクは次第に高まっていることも確かなのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-03-20 09:49 | 金融の歴史 | Comments(0)
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