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動かざること日本国債の如し

 日本国債が動かない。日本国債のベンチマークとなっているのは、一番近い時期に国債入札が行われた10年国債であり、その利回りが長期金利と呼ばれる。これを書いている3月11日でみれば、3月4日に実施された10年国債(333回債、利率0.6%)が指標となる。

 利回りといってもいくつもの種類があるが、日本の債券市場では慣習により売買する際は所有期間利回り(単利)を使う。欧米では主に複利を使うが、日本では単利となっている。その利回り(長期金利)はここにきて0.6%近辺での推移が長らく続いている。

 10年国債の利率は、当日朝の10年国債の利回りを基準に設定される場合が多い。ただし、10年国債に限っては、同じ償還日のものについては0.1%ではなく0.2%上下しないと、利率が変化しない仕組みとなっている。このあたり、やや専門的なものとなってしまうが、リオープンと呼ばれる再発行を行うことにより、同じ利率で同じ償還日ならばひとつの銘柄として売買されるものの発行量が増えれば、流動性が向上するためである。同じ償還日でも利率が違うと、株式市場でいえば東芝と日立のようにまったく別な銘柄として売買されるのである。

 この10年国債はすでに333回を数える。1966年に戦後初めて発行された国債は六分半利7年物国庫債券(第1回)であった。つまり7年物の利率6.5%の国債である。それが1971年1月に国債の年限が延長され7年が10年となり、七分利国庫債券(第1回)が2426億円発行されている。手元にはっきりした資料はないが、たぶんここから10年国債の発行がスタートし、333回を数えるようになったものと思われる。当時と比べると利率(クーポン)は十分の一以下となっている。

 利率がクーポンと呼ばれるのは、まだ国庫債券という証券が存在していたとき(現在はペーパーレスで発行)、半年毎に支払われる利子がクーポン券のように付いていたためである。それを切り取って日銀に持ち込むと現金と引き替えできる仕組みとなっていた。この切り方はかなり慎重を期すようで、マクドナルドのクーポン券みたいに適当に切ってしまうと、受け取ってもらえない場合もあると担当者に聞いたことがある。個人が自分でクーポンを切り離すことは通常なく、証券会社の保管担当者の仕事でもあった。

 その10年国債の利率は、2012年5月に入札された322回が前回の1.0%から0.9%に引き下げられ、それ以降、現在に至るまで1%未満の利率がずっと続いている。10年国債の利回りの推移を見ても、2012年4月あたりから1%未満での推移が継続している。これは時期的に見ても2013年4月の異次元緩和によるものではなく、それ以前から続いているものなのである。まさに動かざること日本国債の利回りの如しである(不動如国債?)。

 この不動如国債の要因については、日銀による国債の買入という需給面での影響が説明としては理解されやすいかもしれないが、果たしてそれだけで説明して良いものであろうか。もちろんデフレという一括りにされた説明もある。ただし、ここにきて消費者物価(CPI)は一時的より上昇したものの、依然として不動如国債であった。日銀が長期金利の上昇を抑えていると、日銀関係者は説明するが、これも疑問が残る。そもそもCPIを見て国債を売るといった動きは出ていない。市場の動きを見る限り、日銀が長期金利を抑えているのではなく、長期金利は上がっていないだけである。

 債券市場がすでに2001年から2006年まで続いた日銀の量的緩和政策時代の短期金融市場の如くなってしまったとの指摘もある。動かない以上は確かに稼ぎようもなく、ディーラーも淡々と国債を入札して一部を投資家に売却して残りを日銀に売却するといった単純なお仕事と化しつつある(それほど単純ではないとのご指摘もあろうが)。

 今後もいつまでもこのような状態が続くのであろうか。来月は異次元緩和1周年と消費増税の開始を迎える。米国はテーパリングを淡々と進めている。アベノミクスの綻びも見えつつある。日銀が国債を買えば万事うまく行くのか。それを一番冷めた目で見ているのも国債市場関係者だと思う。いずれ市場の乱が起きる可能性は十分にあると思っている。

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by nihonkokusai | 2014-03-12 09:50 | 国債 | Comments(0)
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