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ウクライナの地政学的リスク

 ウクライナの問題が地政学的リスクとして欧米市場に影響を与えつつあり、日本の金融市場にも少なからず影響を与える懸念が出てきた。市場に影響が出るとなればある程度の概要を掴む必要があり、ここで少しまとめておきたい。

 ウクライナとは、東ヨーロッパの国であり、東にロシア連邦と接しており、西にハンガリーやポーランド、スロバキア、ルーマニア、モルドバ、北にベラルーシ、南にトルコと接している。日本の外務省の基礎データによると、ウクライナの面積は日本の約1.6倍、人口は4543万人(2012年)で、ウクライナ人が77.8%、ロシア人17.3%、ベラルーシ人0.6%、モルドバ人、クリミア・タタール等が暮らしている。

 2004年末の大統領選挙をめぐる「オレンジ革命」を経て、オレンジをイメージカラーとしていたユーシチェンコ大統領が就任した。言論の自由など民主化は進展するも、内政は混乱した。ロシア産の天然ガスを巡り、2005年にはロシア・ウクライナガス紛争が起きた。2010年3月に親露派のヤヌコーヴィチ大統領が就任。しかし。2013年11月に欧州連合との政治・貿易協定の調印を見送ったことで、親欧米の野党勢力などによるユーロマイダンと呼ばれた反政府運動が勃発し、2014年2月22日にウクライナの最高議会はヤヌコーヴィチの大統領解任と大統領選挙の繰り上げ実施を決議する。

 親露派のヤヌコーヴィチ政権崩壊により、欧米寄りの暫定政権が発足する一方、ロシア系住民が多い南部では、地方議会が自治権の拡大の是非を問う住民投票の実施を決めるなど反発を強めている。特に同国南部のクリミアはロシア系住民が人口の6割以上を占め、自治共和国として独自の議会を持つ。ロシア系住民と暫定政権を支持する住民が対立し、銃で武装したロシア系のグループが、行政府や議会の庁舎を占拠して緊張した状況が続いている、死者が出る衝突も発生し、ロシアに軍事介入の口実を与えようとしているとの指摘も出ている。

 ウクライナ中央銀行の高官が管理為替政策をやめ、変動相場制を採用したと表明したことで、ウクライナ通貨フリブナが一時、最安値をつけるなど金融市場も混乱しつつある。ウクライナの国債価格が下落し、格下げでデフォルト(債務不履行)懸念が台頭した。21日にウクライナを格下げした格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は「デフォルト(債務不履行)もあり得る」と警告している。S&Pは21日、ウクライナの長期外貨建てソブリン信用格付けを「CCC+」から「CCC」に引き下げた。

 ウクライナの通貨や国債の下落も気にはなるが、ユーロ圏にあったギリシャの国債下落による影響と比べると、特に欧米市場への影響はそれほど大きくはないと思われる。プーチン大統領は27日、ウクライナに対して財政支援を行うため、IMFなどと協議していくよう担当省庁に指示した。また、IMFのラガルド専務理事はウクライナで発足した暫定政権から金融支援の要請があったことを明らかにし、財政破綻のおそれも指摘されるウクライナ経済の立て直し策を話し合うために近く調査団を派遣する方針を示した。

 ウクライナの財政破綻への懸念よりも注意すべきは、ウクライナの地政学的リスクかと思われる。欧米とロシアがウクライナで綱引き合戦をするというよりも、ウクライナ国内での綱引き合戦にロシアが乗り込んでくるとなれば、欧米諸国との衝突も懸念される。ウクライナのヤヌコビッチ政権崩壊を受けて、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ国境地帯での軍事演習を命令した。ロシアの黒海艦隊はクリミアに駐留している。

 いまのところ米国は動きを見せるようなことはせず、ロシアもかつての冷戦時代に逆行する事態までは想定してはいないと思われる。しかし、今後のウクライナの情勢如何では、何が起きるか予測しづらい面もある。ウクライナ・ショックが生じることはないと思いたいが、当面の市場動向を探る上では今後のウクライナの情勢も意識しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2014-03-01 10:29 | 国際情勢 | Comments(0)
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