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デフレを解消する意味とは何か

 今回のビットコインの問題からは、あらためて通貨とは何かということを考えさせられた。現在、通貨の発行権は主に中央銀行が持っている。昔は国王などがその権利を持っていたが、乱発される懸念があり、その機能を別の組織である中央銀行に委ねたのである。

 世界で最初に生まれた中央銀行はスウェーデンのリクスバンクとされる。スウェーデンにおける最初の銀行であるバルムストルック銀行は、1661年に欧州で最初の紙幣を発行したものの、十分な担保を確保しないまま過剰な紙幣を発行し、結局その活動を停止してしまった。バルムストルック銀行の破綻後に、国王ではなく議会の監督下に置かれ、政府などからの独立性を有した銀行が設立された。これがリクスバンクであった。現在もこのリスクバンクはスウェーデンの中央銀行として存在している。

 次に歴史が古い中央銀行がイングランド銀行である。1694年におけるイングランド銀行の設立目的は、フランスとの戦争の軍事費の調達に苦慮する政府への財政支援のためであった。当初は政府への貸付けがかなりの割合を占めたことで、国庫金の出納や国債業務など政府の銀行としての役割が強化された。1833年のイギリスの銀行条例によって額面5ポンド以上のBOE券が法貨として認められたが、1844年のイギリスのピール条令によって、事実上イングランド銀行が通貨の発行権を独占することになった。

 日本では1882年に日本銀行条例が制定され、日本の中央銀行として日銀が設立されたが、このモデルは当時としては設立して日の浅いベルギーの中央銀行であったとされている。その日銀が現在、銀行券を発行し、その安定供給を確保するとともに、銀行券の信認を維持するための業務を行っている。

 日銀法第一条には、「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。」とある。さらに第二条 に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とある。

 この物価の安定を図るという意味は裏を返せば、通貨価値の安定を図ることである。この場合の通貨価値とはドルやユーロに対する円の相対的な価値というよりも、物価に対する価値ということになる。

 物価とともに通貨価値の安定というのは、インフレを主に想定したものといえる。デフレの状態というのは通貨価値が安定しているということになるが、物価の下落は経済にとってはマイナス要因となり、反対の意味において物価の安定を図るためにはデフレ脱却の政策が求められた。その結果、打ち出された政策が異次元緩和と呼ばれる大量の国債買入等であった。

 デフレそのものが日銀の金融政策が原因として良いのかどうかという根本的な問題があるが、結果としての責任が日銀に問われ、日銀としてできうる政策、この場合には金融政策ということになるが、でデフレを脱却させようとしている。しかし、それはつまり安定させるべき通貨価値を不安定にさせることにもなりかねない。日銀による国債の大量買入は財政ファイナンスも連想させ、日銀券と同様の信用度を持つ日本国債に対する信用も低下させる懸念がある。

 「別にデフレがいいわけではありません。インフレでもデフレでもなく、自国通貨を安定させ、健全な状態で現実的な成長を目指すべきなのです。」

 これはアベノミクスに警鐘を鳴らすジム・ロジャーズ氏の言葉であるが、私はこの意見に賛成である。日銀はどうも本来の役割から逸脱しつつあるようにも感じる。いまのところ市場の信認を損なうようなことはないものの、このままデフレ脱却と称して数値目標を掲げ、必要となればさらなる国債買入増額も辞さないとなれば、通貨そのものの信認が揺らぐ懸念がある。

 日本国債の暴落や円の急落をいくら叫んでも、狼少年にしか見えないかもしれない。しかし、現在の日銀が通貨価値の安定と物価の上昇というある意味矛盾した政策を行っていることは確かである。非常時の非伝統的手段は致し方ない面もあった。しかし、嵐が去れば正常化が必要であり、FRBはテーパリングを開始した。ところが日銀は、目的がデフレ脱却にすり替わり、いつまでも非常時の対応を続けることで結果として何が生じるか。リスクは次第に膨らんでくることも確かなのではなかろうか

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by nihonkokusai | 2014-02-28 09:44 | アベノミクス
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