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アベノミクスは軍備拡張が目的なのか

 『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』(すばる舎)という昨年出版された本の原稿を書いていたとき、実は気になっていたことがあった。それを原稿に書いておくべきか悩んだが、やや危険な発想ではないかと思い、それを直接指摘することは避けた。ところが、そのとき感じたものは現実だったのかもしれないことを示すような事実が発覚した。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は19日、安倍政権の経済ブレーンでアベノミクスの提唱者の一人である本田悦朗内閣官房参与が首相の靖国神社参拝について「誰かがしなければならなかった。首相の勇気を高く評価する」などと発言したと報じた。そして、首相の経済政策のアベノミクスを巡っては「強い経済を必要としているのは、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためだと(本田氏が)語った」とも伝えられたのである(日経新聞電子版の記事より一部引用)。

 本田氏は20日、靖国発言について「(直接、発言を報道しない)オフレコのつもりだった」として同紙に抗議し、アベノミクスへの言及には「そういうことは言っていない」と記者団に語ったそうである。

 日経新聞電子版によると、菅義偉官房長官は記者会見で、本田氏の抗議に同紙から「修正する用意がある」と回答があったと述べたが、発行元のダウ・ジョーンズは「記事は正確だと確信している。修正は不要と考えており、修正する用意があると申し出た事実もない」との談話を出したそうである。

 実際にオフレコ前提でどのようなコメントを本田氏がしたのかはわからない。しかし、アベノミクスが結果として日本の軍備拡張まで意識したものであったことについては、その模範としたのが昭和初期、太平洋戦争前の高橋財政であったことを考えても可能性は否定できない。本の原稿を書きながら、高橋財政とアベノミクスを比較しているうちに、気になっていたのはまさにその点にあった。安倍首相の靖国参拝は本の原稿ができあがったあとではあったが、安倍首相の行動や発言をみても日本の経済というよりも、対中国などを意識して軍備の拡大を含めた国力の増加を計っているのではないかとの懸念があったのである。

 高橋財政は少なくとも高橋蔵相の意図としては、日本の軍備拡大のために行われたものではない。金解禁による緊縮財政、政策金利の上昇、円高等のための政策により、大きく落ち込んだ日本経済を立て直すことが主目的であった。これらは井上準之助蔵相の主導での政策のため、井上デフレと呼ばれたが問題は物価の下落よりも、景気そのものの低迷にあった。このため、政権が変わって蔵相となった高橋是清が行ったのが、金輸出禁止と財政拡大と政策金利の引き下げであり、為替は円安になるのを放置した結果、日本経済は急速に立ち直り、その結果として物価も上昇した。

 高橋財政の効果があったのは、当時の産業構造が軽工業から重化学工業への移行期にあたり、円安や財政・金融政策がダイレクトに効果を与える環境にあったことも大きかった。何故、重化学工業が急速に発展したのかといえば、その理由は軍事拡張にあった。国家予算についても軍事費の割合が高くなり、これが重化学工業の発展を促すことになる。

 高橋財政でリフレ派が最も注目していたのが日銀による国債引受であった。これによりデフレからの脱却が計られたとしているが、実際には日銀による国債引受は財政拡大を助けた面が大きい。自らこの政策を立案した高橋是清は、いずれ景気が回復しインフレの兆候が出てくれば、日銀の国債引受には自らブレーキを掛けるつもりでいたが、打ち出の小槌を得た軍部はそれを放棄するのは拒んだ。その結果として二・二六事件で高橋是清は軍部により暗殺されてしまう。

 黒田日銀は安倍政権の意向どおりに、国債の大量購入を2013年4月に決定した。消費増税も結局、予定通りに実施することになったが、これは財政再建というより国の歳入増加と考えれば、財政そのものを楽にさせるものとなりうる。安倍政権がアベノミクスによる経済対策をどのように捉えているのかはわからないが、今回の本田参与によるコメントらしきものは無視はできない。デフレ対策と言っておきながら、軍事費、いや防衛費の拡大まで意識した政策であったとすれば危険極まりない発想とも言える。高橋財政によって行われた日銀による国債引受というスキームは、高橋是清にはその意思はなかったろうが、その後の太平洋戦争に向かう財政上の問題をかなり楽にさせるものとなった。

 現在の日銀による国債の大量購入は日本の財政上の問題から生まれたわけではない。国債は日銀の異次元緩和がなくても安定消化されていた。しかし、このようなスキームを作った本人が、「強力な軍隊を持って」と発言したとすれば、アベノミクスとは何を目的としていたのかをあらためて問う必要がある、その結果次第では日銀の異次元緩和による国債の大量購入は早期に停止すべきものと考える。

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by nihonkokusai | 2014-02-22 11:44 | アベノミクス | Comments(0)
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