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金融政策の目的・目標とは何なのか

 米国の中央銀行であるFRBの使命(目的)はデュアル・マンデートと呼ばれ、物価の安定と雇用の最大化となっている。ただし、もうひとつ適度な長期金利も最後に加えられている。デュアル・マンデートがFRBの使命となったのは、1977年の連邦準備改正法の成立によるものだが、その源流には1946年の雇用法があるとされている。

 2012年12月12日のFOMCで少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。いわゆるデュアル・マンデート(最大限の雇用と物価安定)のそれぞれに、期間を限定せずに目標が課せられた。

 欧州中央銀行(ECB)の第一の目的は、物価の安定を維持するとなっている(1991年マーストリヒト条約における欧州中央銀行法)。ただし、物価の安定のみではなく、目的を達成するため各国が高水準の雇用と、インフレの加速しない持続可能な成長の政策を行うことを欧州の中央銀行は支持するとしている。

 ECBのドラギ総裁は2013年7月4日の定例理事会後の記者会見で、「理事会はECBの主要金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する」と発言した。これまでECBは金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、その方針を変更してきた。つまりこちらもフォワード・ガイダンスを取り入れた政策らしきものにそれとなく移行した。

 日本の中央銀行である日本銀行は、日銀法第二条に「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。

 日銀は2013年1月の金融政策決定会合で「物価安定の目標」を消費者物価指数(除く生鮮食料品・消費増税の影響も除く)の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するとした。さらに2014年4月の会合では、2%という物価目標に対して2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するとした。ただし、日銀は雇用の安定については特に目的としていない。

 イギリスの中央銀行であるイングランド銀行における金融政策の目的は、物価の安定を維持すること、および成長及び雇用目的を含む政府の政策を支持すること、と規定されている(1998年イングランド銀行法)。イングランド銀行は政府が定めるインフレーション目標を達成するための政策手段の決定を行う権限を持っているが、財務省が「物価の安定」の内容を決定し、政府の経済政策を具体化する責任を負っている。

 このイングランド銀行は、2013年7月に総裁がキング氏からカーニー氏に変わり、8月のインフレレポートの発表時に、失業率が7%に低下するまで政策金利を過去最低の0.5%から引き上げる検討はしないととて、フォワード・ガイダンスを導入することを発表した。

 そのイングランド銀行は半年あまりで、はやくもフォワード・ガイダンスの修正を行うそうである。すでに目標としてきた失業率が7%近くまで下がってきたことで、新たな枠組みで金融政策を判断するとか。その枠組みなどはさておき、これはどこかおかしくはなかろうか。

 英国経済はイングランド銀行が目指していた目標どおりに回復してきており、目標としていた雇用の数字もクリアーできる段階で何故、当初置いていた目標を取り下げるのか。もちろんこの背景には、ここで何もしないと目的が達せられた以上、利上げは近いとばかりにマーケットが先んじて動いてしまうことを避けたかったと思われる。機械的に動くようなことをせず、物価などへの影響を鑑み、とかいった理由もあろう。

 しかし、このような修正はそもそも金融政策の目的では何であるのか、疑問を投げかける。物価や雇用の安定を目標として、具体的な数値目標を立てるのは結構であるが、その具体的な数字は、国内経済物価動向等を鑑みて本当に適切な数字であるのか。そもそも中央銀行の金融政策で、失業率や物価が動かせるのか、という根本的な問題も存在する。仮に金融政策で物価や雇用が操作できるのであれば、極論ではあるが、政府は何もせずとも金融政策に頼れば良いということになりかねない。まあ、大きな世界的なショックの際は日米欧の政府はほとんど何もできず、金融政策に頼り切ってしまったことは確かではあるのだが。

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by nihonkokusai | 2014-02-14 09:36 | 中央銀行 | Comments(0)
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