イエレンFRB議長の見方は正しいのか
11日の米国株式市場では、イエレン議長の証言からみて、量的緩和の縮小は続くが、緩和的な政策は継続する。つまり利上げはかなり先であろうとの見方などから、11日のダウ平均は4日続伸となり、前日比192ドルもの上昇となった。
今回のイエレン議長の議会証言では、日銀の異次元緩和についても触れていたようで、日経新聞電子版によると、イエレン議長は「日本の成長率を高めるのに成功している」と述べ、日銀の金融政策を支持する考えを表明したそうである。
質疑では米大手自動車のお膝元であるミシガン州出身議員が、ドル高・円安傾向と日本の為替政策への見解を問いただしたところ、イエレン議長は「20年に及んだデフレを勘案すれば、日銀の緩和政策は自然かつ論理的だ」と指摘し、為替政策は国内目的に限って用いるという国際合意の範囲を逸脱していないとの認識を示したそうである(日経新聞電子版)。
黒田総裁と親しいとされ、元々ハト派とされるイエレン議長は日銀の異次元緩和政策に理解を示しているようである。この見方はバーナンキ前議長も同様であった。イエレン議長は「日銀が日本の成長率を高めることに成功すれば、近隣諸国の利益に跳ね返り、ひいては世界経済の利益にもなる」と評価しているようである。
中央銀行の金融政策が失業率を引き下げたり、成長率を高めたりできるのか。政治的には微妙な通貨安政策を除いて、このあたりもぜひバーナンキ氏やイエレン氏に、その仕組みについて教えていただきたいところではある。これについては興味深い指摘も、今回の証言で行っていた。
イエレン議長は、「2008年の金融危機後に採用したFRBの量的緩和政策の目的が長期金利の抑制であり、それに「成功した」と強調。住宅価格の上昇で家計のバランスシートが改善し、借り入れ能力が増したため、雇用が増加する好循環につながったと説明した。」(日経新聞電子版)。
たしかに2007年には5%台にあった米長期金利は2012年に1%台にまで低下した。しかし、この長期金利の低下をFRBの金融政策にだけ求めるにはかなり無理がある。そもそも、2007年あたりからのサブプライムローン問題に端を発してリーマン・ショックに繋がる金融不安によるリスク逃避のための米国債買いの要因が大きかったのではないか。その後はギリシャ・ショックに端を発する欧州の信用不安による世界的な金融経済ショックにより、安全資産として米国債は買われ、つまり米長期金利は低下した。もちろんまったく関係ないとは言わないが、この期間の米長期金利の低下の主要因がQEであったのかは甚だ疑問である。
もしFRBの量的緩和政策の主目的が長期金利の抑制であり、それに「成功した」とするのであれば、日本の異次元緩和についても、円安政策というよりも長期金利の抑制が目的であったとの見方もできる。日銀の異次元緩和は確かに日本の長期金利の上昇を抑制している。ところでその日本の長期金利が抑制されたことで、物価が上がってきているのであろうか。日本のデフレ脱却は長期金利を抑制すれば可能なのか。もちろん天下のFRB議長に異を唱えるようなことはしたくはないが、これに関してはどうも納得がいかないのである。
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