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見透かされたアベノミクス

 2月10日の日経新聞電子版の記事に、『「ソロス氏日本売り」の噂、アベノミクスに飽きた投機筋』との記事が出ていた。安倍晋三首相は1月22日からスイスで開く世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席し基調講演を行った。日本の首相としては初めての基調講演となり、このなかで、アベノミクスの成果を強調したうえで、法人税の実効税率の引き下げを含む税制改革に取り組む決意を表明していた。

 このダボス会議は世界の著名な政治家や経営者らが集まり討論を行うが、サミットやG7などのような公式の会議とはかなり趣が異なり、参加者同士が直接顔を付き合わせて討議が出来る場とされている。そういった意味で、ただの民間会議ではあるが特異な世界会議と言われている。

 1月23日のこのコラムで、以下のようなことを書いた。

 「日本の首相がいまごろになってやっとはじめて基調講演に立ったことに、どれだけの意味があるのかは不明ながら、世界に向けての情報の発信の場となることは確かであろう。それよりも、その後の個別会議のほうがこの会議の性質上は意味があるように思われる。 」

 どうやら安倍首相はこの個別の会議にも顔を出し、ダボス会議の常連とも言えるヘッジファンドのジョージ・ソロス氏と会って話をしたようである。さきほどの記事によると、安倍首相がジョージ・ソロス氏にかなり突っ込まれていたとの観測もあったとか。また、経済について聞いても首相からは気の利いた返答がなかったとの見方も流れていた。

 アベノミクスの誕生は、2012年11月14日に衆院の解散が正式に発表されたときである。2009年8月の政権交代で大きな期待を集めた民主党政権だったが、十分な成果を上げられず、国民の間での不満が強まった。解散総選挙が決まり、自民党政権への期待に繋がり、東京株式市場は11月14日あたりから上昇基調となる。

 11月16日に衆院選が解散されたが、翌17日に熊本市内の講演で、安倍晋三自民党総裁は衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを表明した。さらに、建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていくと述べた。同日の山口市での講演で安倍総裁は、輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう、と発言した。

 いわゆるリフレ政策(中央銀行が世の中に出回るお金の量を増やし、人々のインフレ期待を高めることでデフレ脱却を図ろうとする金融政策のこと)を打ち出すであろうことがこれではっきりし、日銀の金融政策が大きく変わるであろうことが示された。

 これは市場に強いインパクトを与え、デフレ脱却を全面に打ち出すことで、レジーム・チェンジ(体制変換)が意識された。それが外国為替市場(外為市場)で円安を招き、その円安がさらに株価を上昇させるというスパイラルが発生した。

 ここで登場していたのが、ジョージ・ソロス氏のヘッジファンドとされている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドが2012年11月以降、円の下落を見込んだ取引で約10億ドルの利益を得たと報じていた。

 リフレ的な政策を行う事になれば、円安・株高を招くとの見方を強め、その効果そのものへの期待よりも、過剰流動性相場への期待を強めた。欧州の信用不安の後退により、円が急落する余地が十分にあり、そこにまとまった仕掛が入ったことが、アベノミクスと呼ばれた政策の多くを占めるものとなる。つまり急激な円安株高を招いた。アベノミクスを打ち出したのはリフレ派であるが、そこで実際に動いたのはヘッジファンドなど海外投資家達であった。

 ただし、リフレ政策の効果についてはソロス氏も懐疑的であったのではなかろうか。そのため、アベノミクスの中心人物である安倍首相に、直接対話できる場で意見を求めたのではなかろうか。その際、アベノミクスの効果、つまりは異次元緩和でどのようにデフレ脱却が可能なのかを適切に説明が出来たとは思えない。期待に働きかけるといっても、働きかけられる側の投資家が疑心暗鬼では効果が出るはずもない。

 アベノミクスとは何で合ったのか。それをあらためて振り返る必要がある。物価はたしかに日銀の目標に向けて順調に上がっているように見える。果たしてそれは日銀が国債を大量に買ったからなのか。それについては円安を仕掛けた本人達も疑問に感じているのではなかろうか。俺たちが円安を仕掛け、それで結果として日本の物価が上がっただけではないのかと。

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by nihonkokusai | 2014-02-12 09:30 | アベノミクス | Comments(0)
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