牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

FRBは止まったが、ECBはゆっくり走る

 1月9日に開催されたECB政策理事会では、政策金利の据え置きが決定された。主要政策金利であるリファイナンス金利は0.25%に、上限金利である限界貸出金利は0.75%、下限金利の預金ファシリティー金利はゼロにそれぞれ据置かれた。

 据え置きは予想通り。理事会後の会見でドラギ総裁は、ユーロを採用する18か国目として、ラトビアを歓迎する旨の挨拶をした。ラトビア銀行の総裁は2014年1月1日に理事会のメンバーとなっている。メンバーと言えば、欧州連合(EU)加盟国で構成するEU理事会は7日にECB専務理事にドイツ連銀副総裁で女性のラウテンシュレーガー氏を推薦すると発表した。ドイツ政府の労働次官に転出することが明らかになっているアスムセン氏の後任となる。ECB専務理事に女性が就任するのは初めて(1月8日の日経新聞電子版の記事より)。

 ドラギ総裁は会見のなかで、ユーロ危機は終焉したのかとの質問に対し、これについて言明することには、ことのほか慎重だと述べた。その理由として失業率は12%と高く、景気は回復過程にはあるが極めて脆弱であり、金融・経済リスクから、地政学的リスクを通じて、政治的リスクへ向かう可能性が存在していることを指摘した。

 昨年12月のユーロ圏のインフレ率は伸びが鈍化したが、これについてはドイツのサービス部門インフレ統計の技術的な影響として一時的なものとした。ちなみに1月7日に発表された12月のユーロ圏消費者物価指数速報値は前年比0.8%の上昇と、11月の0.9%の上昇から伸びがやや鈍化した。

 昨年11月7日のECB政策理事会で、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利を0.25ポイント引き下げ、過去最低の0.25%とした。これは10月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比0.7%の上昇と予想の1.1%を大きく下回ったことも一因とされた。11月の理事会でドラギ総裁は、バイトマン独連銀総裁が中心となる理事会メンバーの約4分の1の反対を押し切って、利下げを決断したとされる。何故に11月にECBは電撃利下げを実施したのか。本音はなかなか見えないものの、物価下落はあくまで理由付けに過ぎず、FRBの動向などを意識しながら、タイミングを見計らって、最後のカードを使いたかったのではなかろうかと推測される。このため、今回は物価が予想の0.9%を下回っても、技術的な理由と片付けていたのではなかろうか。

 ドラギ総裁は、フォワードガイダンスの強化を示す、より強めの表現を用いたともコメントし、必要があれば行動するとの決意を繰り返した。特にリスク要因として、短期金利の予想外の上昇やインフレの中期見通しの悪化を指摘している。ただし、デフレへの懸念については、日本のような状況には陥らないであろうと指摘している。その理由として、ECBは早めに手を打っていたこと、金融部門のバランスシートは当時の日本の金融機関ほど痛んではいないことなどを挙げていたが、インフレ予想が当日の日本とは違って2%近辺に維持されている点を指摘していた。

 ECBも当然ながら、日本のデフレには大きな関心を持っており、それをひとつの反面教師として政策に生かしていた面もあろう。しかし、本当に素早く中央銀行が行動すれば日本のデフレは防げたのか。当時の日本人の予想インフレ率が物価下落に直接影響を及ぼしていたのか。このあたりについては、個人的には疑問も残る。

 それはさておき、ECBは今回、予想されていたように行動は起こさなかった。また、同日のイングランド銀行(BOE)のMPCでも現状維持が決定された。

 このECBとBOE、そしてFRB、BOJの今後の動きについて、運動会のかけっこに例えてみたい。FRBは12月に走ることを止めた。12月のその前にBOEは止まっており、後退するタイミングを伺っている。ECBはゆっくりとながら走ってはいるが、かなりスピードを落としている。それに対し、BOJは全速力で走っており、さらに一段のスピードアップも計ろうとしている。今年の市場動向をみる上では、この日米欧の中央銀行の走り方の違いもひとつの注目点となると思われる。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。毎営業日3本届いて、価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2014-01-11 11:08 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー