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ギリシャの長期金利から見たユーロ危機

 欧州の信用不安、欧州債務危機、欧州ソブリン危機などいろいろな呼び方をされているが、ユーロ全体を脅かしたユーロ危機は2010年の年初から始まったギリシャの債務危機が発端である。

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより、前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。

 これを受けて格付会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債は下落した。同様に債務状態が悪化しているポルトガルやスペインなどにも飛び火したのである。

 2010年のギリシャの長期金利(10年国債の利回り)を見てみると、年初は6%台であったが5月には10%を超えてきた。ギリシャの財政懸念がポルトガルやスペインにも波及し、外為市場ではユーロが大きく売られ、株式市場も下落した。

 市場の動揺に対して、5月9日にECBは市場機能の正常化を目的とした国債買入の実施を決定した。欧州連合(EU)は10日に過去最大規模となる最大7500億ユーロ規模のユーロ圏支援基金と証券買い取りプログラムを公表した。これでいったんギリシャの長期金利は11%台から7%台に低下するものの、その後再びギリシャの長期金利は上昇する。

 欧州の債務危機はギリシャばかりでなく、ポルトガル、スペインそしてイタリアにまで広がり、2011年9月にはギリシャの長期金利は20%台を突破した。ユーロというシステムはこのまま危機が深刻化し政治的な駆け引きに終始するとなれば、最終的に崩壊してしまうのかとの懸念が強まった。

 欧州危機は深刻化し、ユーロ圏周縁国だけでなく中核国の長期金利も上昇しつつあった。これらユーロ圏国債を大量に保有する欧州系の銀行は、資金の取り入れに困難をきたし、ドル資金の調達コストがじわりじわりと上昇した。2011年11月にギリシャの長期金利は30%台に上昇し、これから2012年3月まで30%台の水準が続く。

 ECBが2011年12月8日のECB政策理事会で流動性を供給するため期間36か月の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設し、これが実施されたことで相場の地合が変化する。LTROによる資金供給により、銀行の資金繰りが楽になり、さらにその資金はいずれ国債に向かうであろうとの期待もあり、それがユーロ圏の国債市場を支えた。

 2012年3月に2回目のLTROが実施され、このあたりをきっかけにギリシャの長期金利は急速に低下する。3月中に一時ギリシャの長期金利は20%割れとなる。しかし、5月6日のギリシャの議会選挙で、連立与党が過半数を獲得できなかったことで、新たな不安が強まった。 緊縮財政策を避けるためのユーロ離脱について、ギリシャ国民はその8割がユーロ圏残留を望んでいるという世論結果も出るなどユーロ崩壊の懸念が再燃したのである。

 6月17日のギリシャの再選挙では、救済受け入れと緊縮措置に前向きな新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が合わせて過半数を制した。ギリシャ国民はユーロ圏離脱のリスクを冒すような選択はしなかった。これで最悪の事態は回避された。

 6月に入り一時ギリシャの長期金利は30%超えとなっていたが、ここから下落基調となる。9月6日のECB政策理事会で償還期間1~3年の国債を無制限で買い入れることを決定したことも、長期金利の低下に拍車を掛けた。

 ギリシャの長期金利は10%手前でいったん低下は止まるが、2013年5月に10%を割り込む。5月2日のECB政策理事会で政策金利であるリファイナンス金利の0.25%引き下げを決定したことも影響した。その後再び10%台に乗せるが、9月18日のFOMCでのテーパリング見送りなどから再び10%を割り込み、2014年1月7日にはギリシャの長期金利は7.73%まで低下したのである。

 ギリシャの長期金利の動きをもとに、ユーロ危機を振りかえてみたが、当初はギリシャの国内問題であったものが、ユーロというシステムの問題に拡大し、ユーロ崩壊の危機が生じた。これはECBやEUなどの支援とともに、ユーロ残留を希望したギリシャ選挙の結果などから、大きな危機は回避された。その後は、ECBのLTROや無制限の国債買入決定などにより、市場も沈静化してきたことが、ギリシャの長期金利の推移からも見て取れる。このようにギリシャの長期金利のグラフからも、大きな山は越えてきたことが確認できるのである。

ブルームバーグ Greece 10 Year チャート
(上記のグラフの5年分を確認してみてください)

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by nihonkokusai | 2014-01-10 09:47 | 国債 | Comments(0)
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