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GPIFに関する伊藤隆敏教授の発言

 公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で座長を務めた伊藤隆敏東京大学大学院教授は、「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は運用資産の6割を占める国内債券の一部を直ちに売却し始めるべきだ」とブルームバーグのインタビューで述べたそうである。

 伊藤教授は「GPIFについては「国内債中心のポートフォリオ見直しが一つの大きなテーマだ」と指摘し、資産構成比率を規定する「基本ポートフォリオ」の乖離許容幅を利用して下限の52%まで減らすのが「すぐ取り組むべき課題だ」と主張した。

 伊藤教授は(保有する国債は)満期保有なので名目上は損失が生じないとしても、消費者物価や市場金利の上昇に見劣りする機会損失を被れば「受託者責任を果たしていない」ことになると三谷GPIF理事長に対してけん制した。平常時なら巨額の売却は国債市場の波乱要因となりかねないが、黒田東彦日銀総裁が「量的・質的金融緩和」を推進しているとし、「今なら大丈夫だ。市場もGPIFの売りを歓迎する。物価と予想インフレ率、市場金利が上がってからでは危険だ」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

 この発言が伝わった12月6日の債券市場は大きく下落した。米雇用統計の発表前のポジション調整売りも入ったと思われるが、この伊藤教授のコメントが材料視されたことも確かである。

 国債の需給面では日銀の大規模な買入が存在している以上、現状では市場にはそれほど大きな影響を与えずに売却は可能なのかもしれない。4月以降、メガバンクは国債を売り越し、それは一時的な国債の乱高下の一因となったが、日銀以外にも買い手が存在していたこともあり、結果として相場が大きく崩れるようなことはなかった。

 「物価と予想インフレ率、市場金利が上がってからでは危険だ」との発言については、まったくもって意味不明である。それは国債保有者すべてが危険に晒されているかのような発言である。そもそも異次元緩和により、長期金利はほとんど上がっていない状況をどう説明するのか。需給面で日銀の国債買入が利回り上昇を抑えている面もあるが、市場参加者が物価の上昇やそれによる金利上昇を意識していない面も大きい。そもそも伊藤教授の相場勘が絶対に正しいとの保証もない。相場を読むことは非常に難しい。これは相場を少しでもかじればわかる。それを部外者(市場関係者外)といえる伊藤教授が適切な相場勘を持っているとも考えづらい。念のため確認しておくが長期金利、つまり国債価格については市場が決定している。

 「予算・人員・給与に関する制約が緩めば常勤の専門家の採用は「今すぐにも可能だ」と述べた。その後に法改正を進め、日銀のような自由度の高い特殊法人にすべきだと強調した。」

 巨額の資金を運用し、適切な相場勘を持ち、ある程度自由な運用で一定の収益をあげられるような腕の立つ専門家などはほとんど存在しない。しかも、その運用の大きな方向性は伊藤教授のような立場の人が決めてしまうと、むしろ運用の方向性は狭められてしまう。たとえそのような専門家が、ある程度の給与で仮に得られたとしても、適切な運用はできまい。

 また日銀のように自由度の高い特殊法人というが、こと金融政策に関しては安倍自民党総裁が日銀法改正をちらつかせ、息のかかった人物を総裁に据えることで、政府の意向を強く反映したものとなっている。このどこに自由度があるというのであろうか。

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by nihonkokusai | 2013-12-12 09:55 | 国債 | Comments(2)
Commented at 2013-12-12 13:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 通りすがり at 2013-12-12 13:31 x
たまに拝見している者ですが、今回の投稿は、よくわかりませんでした。だからどうしろと仰りたいのでしょうか?

そもそもポートフォリオ構成を変えるなと仰りたいのか、金利は上がらないのだから国内債券偏重がいいではないかと仰りたいのか、金利が上がってから考えればよいではないかと仰りたいのか、学者が決めないで国民投票で決めろと仰りたいのか(本文中で専門家でも適切な運用はできまいと仰られてますので、取りうる選択肢はファンドの解散か全員参加ぐらいかと愚考しました)、さっぱりわかりませんでした。また、現在金利は上がっていないのだからという理由で、将来の金利上昇の可能性を排除してしまうのも理解できませんでした。物価連動債を除くすべての債券には、インフレに対する脆弱性を内包しているのは自明だと思うのですが。

いずれにしましても、一番わからなかったのは、対案は何か?ということでした。対案のない反論は、指摘が的を射ていたとしても、50点が最高点で、多くの場合は役に立ちません。是非、その辺を追記していただければ幸いです。
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