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欧州の金融政策にも変化の兆し

 11月29日に発表された11月のユーロ圏消費者物価指数速報値は、前年比0.9%の上昇となった。また10月のユーロ圏失業率も12.1%なり2011年2月以来初めて低下した。12月2日に発表された11月のユーロ圏製造業PMI改定値は2011年6月以来の高水準となった。

 11月7日のECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利を0.25ポイント引き下げ、過去最低の0.25%とした。この要因として物価と雇用の数字が挙げられた。10月31日に発表された10月のユーロ圏消費者物価指数は前年同月比0.7%の上昇となり、予想の1.1%を大きく下回った。さらに9月の域内失業率は過去最悪の12.2%となっていたためである。

 11月7日のECBの電撃利下げが奏功して、物価や雇用が戻ったわけではないが(金融政策の効果にはタイムラグがある)、11月のCPIと雇用の数字を見る限り、少なくとも12月5日のECB政策理事会での追加緩和観測は後退した。今後も状況次第でマイナス金利を含めた追加緩和観測が出てくる可能性はないとはいえないが、あまり期待しない方が良いのかもしれない。11月の利下げは、ドラギ総裁がうまいタイミングで最後のカードを切ってきたようにも思われる。

 イングランド銀行のカーニー総裁は11月29日付け英紙ガーディアンに掲載されたインタビューで、「これから背負う住宅ローンのことを考えてほしい。金利が上昇した場合、5年後、10年後にはたしてローンを返済できるだろうか」と発言したそうである。住宅バブルの懸念が出ているなか、購入予定者に慎重を期すよう求めた格好となった(ロイター)。

 11月29日にイングランド銀行が発表した英国の住宅ローン承認件数は、2008年2月以降で最多となった。ただし、企業向け融資は減少していた。住宅価格も2010年7月以来の大幅な伸びとなった。イングランド銀行は28日に公表した金融安定報告書で、「融資のための資金調達スキーム(FLS)」の適用対象を2014年から企業向け融資のみとし、住宅ローン向けを外す方針を示した。

 カーニー総裁は29日のインタビューで、利上げに関し住宅市場の抑制には「非常に切れ味の悪い手段」としており、経済全般を阻害するとの考えをあらためて示したことから、すぐに利上げといった手段は講じなくても、今後は不動産バブルにも注意を払ってくることが予想される。

 欧州の動向を見る上では、このようにユーロ圏の雇用などの経済、物価動向、さらには英国の不動産バブルの行方等も注意する必要があるが、ここにきてのソブリン格付けの動向にも目を配る必要がある。

 格付け会社ムーディーズは11月29日に、ギリシャ国債の格付けを「C」から「Caa3」に引き上げたと発表した。ムーディーズは格上げの理由として、財政再建の著しい進展や中期成長見通しの改善に加え、政府の金利負担が大幅低下した点を挙げた(ロイター)。

 29日にS&Pは、債務返済に関する差し迫ったリスクは後退したとして、キプロスの長期ソブリン格付けを「CCCプラス」から「Bマイナス」に引き上げた。見通しは「安定的」。

 さらにS&Pは、オランダの長期ソブリン格付けを「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。格付け見通しは「安定的」。成長見通しの悪化を理由に挙げた。オランダの格下げを受け、ユーロ圏で最上級の格付けを維持している国はドイツ、ルクセンブルク、フィンランドのみになった(ロイター)。

 S&Pはスペインの格付けに対して、見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更した。

 29日のユーロ圏の債券市場では、スペインの国債は買われたが、オランダの国債はほぼ変わらず。このあたりの市場の動きを見てもユーロ圏の信用不安がかなり後退していることがわかる。そもそも格付けの変更がほとんどニュースにさえなっていない。

 この信用リスクの後退により、むしろ積極的な金融緩和の影響の方が意識されつつあり、それが英国で不動産バブルといった格好で見えてきている。米国のテーパリングの早期開始の可能性も出ているが、欧州の金融政策にも変化の兆しが出てきており、この欧州の動向にも注意を払う必要があろう。
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by nihonkokusai | 2013-12-03 09:31 | 中央銀行 | Comments(0)
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