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アベノミクスでも国債が動かない理由

 10月の米雇用統計を受けて、バーナンキ議長の任期期間中のテーパリング開始決定の可能性が再浮上した。米10年債利回りは12日の東京時間で2.77%あたりまで上昇している。これに対して日本の長期金利は0.6%近辺にあり、予想以上に低位安定している。ちなみに通常長期金利と呼ばれているものは、直近に入札された10年物国債の利回り(所有期間利回り)のことを指す。

 国債の価格と利回りは反対の動きをする。たとえば10年物で毎年利子が10%もらえる国債を100円で買ったとする。その国債の金利が5%になってしまったら、どうするか。もちろん10%の国債を持っている人はラッキーとなるが、国債は有価証券であり、市場価格が存在する。つまり毎年10%の利子がもらえる国債は値上がりする。その価格が買ったときの100円から150円ぐらいになる。それは何故か。国債は100円で償還される。つまり150円で買った国債は償還時に100円になってしまうので、50円損をする。その損失を1年あたりに直すと5円となる。つまり毎年利子が10円もらえるが、そこから5円の損失をマイナスすると残りは5円となる。つまり10%の利子の国債も、価格が100円から150円に上昇することで「金利」が5%となるのである(期間等の細かい計算はここでは除いている)。

 アベノミクスの最初の柱である日銀の量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和により、日銀は年間の国債発行額の7割も購入することになった。異次元緩和の目的は消費者物価指数(除く生鮮食料品)の前年比を2%に引き上げようとするものである。そのために国債を大量に買うことになった。どうして国債を大量に買えば物価が上がるのか。残念ながら私はその説明はできない。日銀もいろいろと説明はするが、良くわからない。その経路はさておき、とにかく日銀は国債を大量に購入していることは事実である。

 日本の国債残高は今更言うまでもなく巨額である。財務省が先日発表した国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(9月末現在)によると、普通国債で約728兆円、短期国債などを合わせた内国債(日本国債に外貨建てはない)で約840兆円ある。ただし、これを買い入れる資金は国内中心に存在しており、特に日銀が頑張って購入せずとも、当面は民間金融機関を中心に安定消化される見込みとなっていた。そこに日銀が無理矢理国債を大量に購入したために、国債が買われ、つまり長期金利が低下した面は確かにあるが、本当にそうであろうか。

 需給だけで国債価格が動くのかと言えばそうではない。FRBもせっせと毎月850億ドルも債券(国債とMBS)を購入し続けているが、米国の10年債利回りは1%台から3%台に跳ね上がり、その後2.5%近辺に低下して、また2.77%近辺に上昇している。この背景には米国のテーパリングの行方が大きな材料となっている。つまり市場参加者の予測、予想などにより長期金利、国債の価格は乱高下しうるのである。

 それに比べて日本の長期金利、つまり国債の価格はあまりに動かなすぎる。異次元緩和決定の翌日は一日で0.3%から0.6%台に動くようなこともあった。また5月に長期金利は1%まで上昇したが、7月あたりからじりじりと下がってきている。これはいったい何故なのか。

 日本国債への信用はとりあえず維持されていることもあろうが、その根本にはデフレからの脱却は無理、日銀の2年間の2%の物価目標など達成は不可能との認識が根底にあるかと思う。日銀は時間軸政策を放棄した格好ではあるが、国債市場では時間軸が強く意識されているかのようである。つまり日銀の異次元緩和でも物価の上昇はありえない、だから現在の超緩和策はずっと続くとの予想があってこその超低金利ということになる。

 アベノミクスが登場してまもなく1年が経過する。欧州の信用不安後退というタイミングで出てきたことによる急激な円高調整と、この円安と世界経済の回復を背景とした株高により、アベノミクスはうまく行っているかのような印象を受ける。しかし、この長期金利を見る限り目的は果たされてはいない。もし物価が上昇すると市場が予想していれば、それは当然、長期金利に働きかける。その長期金利の上昇を抑制するため、日銀がうまく買いオペを利用する、みたいなこともない。日銀は淡々とオペを打っているだけである。どうもこの長期金利の動向を見る限り、アベノミクスは決してうまく行っているとは思えないのである。

聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓

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by nihonkokusai | 2013-11-13 08:06 | アベノミクス | Comments(0)
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