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市場参加者のインフレ予想とは何か

 日銀の岩田副総裁は、10月18日に『「量的・質的金融緩和」の目的と その達成のメカニズム』と題する講演を行った。岩田副総裁は、いわゆるリフレ派の理論を形成される中心人物の一人であるとともに、日銀の異次元緩和を主導した一人。今回の講演でも、その日銀の異次元緩和がどのように物価の2%上昇に働きかけるのかの説明があった。

 「市場参加者が、マネタリーベースや超過準備の動向から中央銀行の金融政策レジームを判断し、将来の貨幣ストックや将来の金利およびインフレ率を予想するからです。」

 この「市場参加者」がどの程度の範囲を指すのでは定かではないが、たぶん債券市場のディーラーもその端っこにでも含まれるのであれば、自分での14年程度の市場参加者の経験から、これについての感想を述べてみたい。

 将来の金利、なかでも長期金利の先行きを予想するのに、日銀の金融政策に関する情報はかなり大きなものを占めているのは事実である。日銀の異次元緩和で国債の需給面での関心も高まった。しかし、その比重は状況によって変化する。次年度予算に伴う国債発行計画や財務省の国債管理政策に比重が置かれることもある。そして何より都銀、生保、年金などのいわゆる機関投資家の動向に注目が置かれることも多い。もちろん機関投資家が先行きをどのように見ているのかについて中央銀行の金融政策を重視している面もあるかもしれないが、それだけを見ているわけでもない。足下の物価動向、景気動向のいわゆるファンタメンタルズを注視し、そこに比重が掛かることもある。海外要因に比重が掛かることも当然ある。

 つまりは市場参加者、なかでも物価連動国債なども含めた国債を売買している当事者は、マネタリーベースや超過準備だけを見ているわけではない。むしろ、マネーサプライなどについては、大昔に比べほとんど関心を示すようなことはなくなっている。同様にマネタリーベースが増加しようと、日銀の当座預金残高が100兆円を超えたのかといった程度の関心しかない。刻々と増加する超過準備に目を光らせているのは、日銀の担当者と短期市場関係者の一部ではなかろうか。

 つまり市場参加者が足下や将来のマネタリーベースや超過準備の動向を見据えて、債券を売買しているという事実はまったくないとは言えないが、他の要因に比べればかなり低い。現在で言えば、FRBのテーパリングの開始時期などのほうが余程関心が高いはずである。

 そもそも市場参加者がインフレ率を予想して、それがどのように一般庶民のインフレ予想を高めるというのであろうか。BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)などといっても債券市場関係者以外、はっきり言えばその債券市場関係者でもその推移を刻々見守っている者は物国の直接担当者以外は個人的に関心があるほんの一部であろう。

 市場参加者が、マネタリーベースや超過準備の動向から中央銀行の金融政策レジームを判断し、将来の貨幣ストックや将来の金利およびインフレ率を予想した結果が、長期金利に現れるのであれば、長期金利の形成要因が、中央銀行の金融政策レジームだけしか見ていないような前提にあるのか。しかし、日本国債への信認が低下するだけでも、その前提はあっさりと崩れる。

 「将来の貨幣ストックの経路に関する予想と予想インフレ率の間には密接な関係があり、そうして形成される予想インフレ率が現在のインフレ率を決定するのです。 」岩田副総裁。

 その将来のインフレ率が市場参加者を通じて形成されるとするのであれば、市場参加者が適切なインフレ予想を抱くという前提がある。過去の経験から言えば、市場こそよく間違える。間違った予想が将来のインフレ率を形成するというのであれば、それこそリスクを伴うことになりはしまいか。



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by nihonkokusai | 2013-10-22 08:00 | 日銀 | Comments(0)
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