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テーパリング見送りの理由とその影響

 9月17日から18日にかけて開催されたFOMCでは、予想されたテーパリング(tapering)、つまり量的緩和策の縮小開始を見送った。あくまでテーパリングを勝手に予想していたのは市場参加者であり、決めるのはFOMCの投票権を持つ参加者であるため、見送って何が悪いと言われても言い返せない。ただし、今回のテーパリングの見送りは金融政策に必要とされる市場との対話に齟齬を来す懸念がある。

 4月4日の日銀の異次元緩和後の債券市場での急激な価格変動の大きな要因に、市場との対話不足があった。日銀が債券市場に強力に介入するにあたり、事前に何ら市場関係者との協議等もなく実施されたことで混乱を招いた。と非難めいたことを書いたが、金融政策において金融緩和はサプライズが必要であり、金融引き締めには時間をかけて市場を説得することが必要となる。その意味では、日銀の異次元緩和もある意味、効果的であったのかもしれないが、もう少し市場に配慮すべきであったことも否めない。

 FRBのテーパリングは緩和と引き締め、どちらなのかと言えば当然ながら引き締め方向にあたる。非伝統的な政策手段を使ってまでの非常時の対応という意味からは正常化への動きではあるが、それでも緩和からの反転を意味するために、バーナンキ議長も市場に配慮した姿勢を見せた。それが5月22日のバーナンキ議長の議会証言後の質疑応答における、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘であった。この日には4月30日~5月1日に開催されたFOMC議事要旨も発表されたが、複数の議員が、早ければ6月にも資産購入を減額したいとの意向を示していたことが明らかになったのである。

 市場では最近のFRBの政策変更決定は、議長会見があるFOMCにおいて行われている事例から9月のFOMCでのテーパリング開始との見方が次第に強まっていった。9月6日に発表された8月の雇用統計では、非農業雇用者数が16.9万人と予想を下回ったものの、テーパリング開始との見方は維持されていた。このため、18日のテーパリング見送りがサプライズとなった。米国市場では株や債券は買われてこれを好感したものの、これはFRBの市場との対話の失敗も意味する。今後、FRB議長がどのようなコメントをしても、市場はそれについてかなり懐疑的な目を向けてくる可能性があり、対話が成り立たなくなる懸念がある。これは今後のFRBの出口政策をより困難にしかねない。

 それでは何故、今回バーナンキ議長はテーパリングを見送ったのか。元々やる気ないのに市場が勝手に予想していた、長期金利が予想以上に上昇してしまった、はたまた8月の雇用統計等みて気が変わった、IMFのラガルドさんにも言われていたが新興国市場が気になった、などなどの理由も考えられる。

 18日のバーナンキ議長の会見では、景気は量的緩和縮小の根拠になるほど強くないことや過去数か月間の金融市場の逼迫が景気拡大を鈍化させるとの懸念とともに、財政問題の悪化が金融市場に打撃を与える可能性が指摘されていた(9月19日日経新聞電子版より)。

 特に注目すべきは「財政問題の悪化」との指摘なのかもしれない。これはつまり再び懸念材料となりそうな米政府の債務上限問題が背景にあるのではないかとの見方である。連邦下院で多数を占める共和党が上限引き上げに応じない姿勢を強め緊張感が高まっているそうである。(9月20日日経新聞電子版より)

 オバマ大統領は、FRB議長の後任に指名しようとしたサマーズ氏が自ら辞退し、シリア問題においても自らの主張を覆せざるを得なくなり、急速に求心力を失いつつある。このような状況下、債務上限の引き上げがかなり困難を極めることも予想され、テーパリングの時期を先延ばしせざるを得なかったのではないか。真実はどうあれ、今回のテーパリング見送りは今後のFRBの金融政策そのものを難しくさせるとともに、その原因が政府にあるとすれば、今後の市場はかなり不安材料を抱えこむことにもなりかねない。

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by nihonkokusai | 2013-09-21 11:46 | 中央銀行 | Comments(0)
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