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再開される物価連動国債の発行

 10月8日に第17回の物価連動国債の入札が予定されている。これにより2008年8月以来、ストップしていた物価連動国債の発行が再開される。あらたに発行される物価連動国債は、償還時の元本保証(フロア)を設けたものとなり、これまでのものに比べてこの点に商品性の違いはあるが、同じ10年の物価連動国債であることから、回号は2008年8月発行の16回債に続く「17回債」となる。

 今年度の物価連動国債は、この10月と来年1月にそれぞれ3000億円程度、都合6000億円程度の発行が予定されている。入札は価格競争入札によるダッチ方式となり、表面利率は入札当日のオファー時に公表される。発行価格は募入最低価格となる。

 そもそも物価連動国債とは、米国ではTIPS(Treasury Inflation Protection Securities)とも呼ばれ親しまれている国債であり、インフレ連動債とも呼ばれている。通常の固定利付国債は発行時の元金額が償還時まで不変で、利率も全ての利払いにおいて同一となる。つまり発行後にもし物価が上昇すると、名目ではなく実質ベースでみた通常の固定利付国債の債券価値は低下してしまうが、物価連動債の場合、クーポン利率は固定であるものの、物価上昇に連動して元本が増加するため、インフレの際にも実質的な価値が低下しない債券となる。

 発行後に物価が上昇(下落)すれば、その上昇率に応じて想定元金額が増加(減少)する。償還金額も物価に応じて変化するが、17回債からは償還価格が元本を割れることなく元本が保証されものとなる。

 欧米主要国で発行されている物価連動国債についても、米国、ドイツ、フランスなどで償還時の元本保証がある。発行年限については日本では10年債のみであるが、米国では5年債、10年債、30年債があり、英国では3か月から50年債まで多様な年限のものが発行されている。国債発行残高に占める割合も米国は7.7%、英国では23.8%となっている(2013年3月現在)。これに対して日本では発行が停止されたこともあり、わずか0.4%に過ぎない。ちなみに10年物価連動国債の残高(8月30日現在)は10兆1446億円となっている。ただし、財務省による買入消却が6兆7574億円、日銀による買入が1兆1764億円あり、市中残高は2兆2108億円しかない(財務省資料より)。

 2004年3月から日本でも発行された物価連動国債の購入者は、主にヘッジファンドなどの海外投資家であった。ところが海外投資家がサブプライム問題などによる金融市場の混乱により、保有していた物価連動国債を売却したことで価格が急落し、買い手が不在となった。流動性そのものが欠如する状況となり、財務省は2008年9月以降、物価連動国債の新規発行を凍結するという事態となったのである。

 国内投資家が物価連動国債の購入に慎重になっていたのは、そもそも国内投資家がインフレに連動する負債を持っていないことに加え、元本が保証されていないことにより満期保有ができないという商品性によるところが大きかった。10月発行分からは、そのフロアも付くことで海外投資家のもならず、一部の国内投資家のニーズも見込めると思われる。

 今年4月の日銀の異次元緩和もあり、日銀の想定した2年以内で2%の達成が可能かどうかはさておき、2020年の東京オリンピック、さらに消費増税の影響等もあり、今後の物価上昇も意識される。そうなればある程度の物価連動国債へのニーズも生じてくるのではないかと予想される。むしろ3000億円程度と発行額が抑えられている分、入札がやや過熱する可能性もありうる。

 フロア以外の商品性に変化がないため、10月入札の物価連動国債も機関投資家向けとなり、個人は保有することができない。ただし、物価の動向次第では個人投資家によるニーズが出てくることも予想される。

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by nihonkokusai | 2013-09-18 10:01 | 国債 | Comments(0)
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