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テーパリングの影響と五輪に向けてのマインド変化

 9月12日に行われた日銀の石田審議委員の記者会見の要旨が公表された。石田委員はFRBのコミュニケーションに関して次のような発言をしている。

 「私が思っているのは、マーケットは基本的に買い持ちですから、金利を下げる時は値段が上がるということで好感する一方、金利を上げる時は値下がりする、損をするということですので、マーケットとの対話は難しくなります。」

 マーケットではじりじりと買われ、売られるときは一気にドスンとくるケースが多い。金融政策は金融を緩和するときよりも、引き締める時の方が難しくなる。金融緩和についてはある種のサプライズがマーケットには効果的となる。金融引き締めについては、マーケットが過剰反応するのを抑える意味でもそれをどのようにマーケットに少しずつ織り込ませていくのかが課題となる。石田委員の指摘した通り、市場価格の下落への恐怖心を如何に起こさせないようにするのか、このあたりの舵取りが難しい。

 今回のFRBによるテーパリングについては、うまくマーケットに織り込ませているのではないかと思われる。米国債は下落し、10年債利回りは一時3%台に乗せたが、このあたりは予想の範囲内ではなかったろうか。

 「ネガティブなマグニチュードについては、今のところはコントロールされているようです。一部の人は、外貨準備や海外からの短期借入依存度など、いくつかの指標について、健全性のレベルがアジア危機の時とは格段に高くなっているということを言っていますが、私自身もマグニチュードは世の中がひっくり返るほど大きなものにならないのではないかと思います。」

 これはFRBによるテーパリングによる新興国への影響についての石田委員のコメントである。新興国への影響は以前のアジア危機などに比べれば大きくはないと思われる。ある程度の影響は避けられないものの、現在、すでに落ち着きを取り戻しつつある。

 ちなみにFRBのテーパリングについては、9月17日、18日のFOMCで決定されるであろうとの見方がマーケットでもコンセンサスとなっている。米国景気そのものも回復基調にあることは確かであり、バーナンキ議長としても12月より9月に決定したいとの意向ではないかと思われる。注目はむしろテーパリングの有無よりも縮小幅に移っている。

 「我々日本人には、長く続いたデフレやリーマンショック、東日本大震災など、様々な面で負のプレッシャーが掛かっていたと思いますがそうした中で非常に明るい、将来に対して希望を持てるイベントだと思います。そういう意味ではデフレ脱却に対しても、個人のマインドを明るくするという意味で、将来に対するコンフィデンスを強めていくのではないかと思います。」

 これは2020年の東京オリンピック開催による経済への影響についての質問の答えである。石田委員の指摘通り、「3兆円だとか10 兆円だとか」の数字よりも、特に若い世代への将来への希望を抱かせるイベントであることをもっと注視すべきであると思う。ここでの「デフレ脱却」の意味がわからないが、景気とともに雇用が回復し、その結果として緩やかな物価上昇が起きるということであれば、このオリンピック開催によるマインドの変化は影響を与えて来るのではないかと思う。

 「将来に対する信頼感が個人に出てきて、それで企業の価格設定行動にも大きく影響し、幅広い品目で適切な物価上昇が起こってくるのだろうと思います。」

 デフレ脱却とはこのような動きのことを示すと思われる。それには果たして異次元緩和でマネタリーベースや国債買入規模を2倍にすれば達成できるものなのか。無理矢理インフレへの恐怖を抱かせるような政策をせずに、将来に対する信頼感を抱かせるのが重要であるのであれば、何をすべきなのか。この答えは金融政策では見つからないと思う。

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by nihonkokusai | 2013-09-15 17:17 | 日銀 | Comments(0)
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