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進撃のアベノミクス

 2012年11月の衆議院解散をきっかけとしたアベノミクスの登場により、円高調整に拍車が掛かり、それが株高を演出した。円安と株高の相互作用も生じて、まるで80年前の高橋是清による高橋財政の登場時のような状況を生み出した。

 欧州の信用不安の後退とそれによる世界的な景気回復の動きを背景に、円安効果も手伝い日本経済も回復基調となってきている。9月9日に発表された4~6月期GDP改定値は前期比年率3.8%増と、速報値の2.6%増から上方修正された。政府は13日に公表する9月の月例経済報告で景気判断を「緩やかに回復しつつある」とし、景気回復の認識を明確にするそうである(10日の日経新聞朝刊)。

 アベノミクスは期待というよりもマーケット参加者の恐怖に働きかけた。私の債券ディーラー時代の上司の口癖のひとつに「上げ100日に下げ3日」というものがあった。じりじりと上昇していた相場が、下げる時は勢いよく一気に下げる。これは株式市場や債券市場ばかりでなく、外為市場でも起こりうる。リスク回避、リスクオフとはやしながら円買いポジションを大きく膨らませ、さらなる円の上昇を願っていた投機家達が、地合の変化とともに、マネタイゼーションを意識させるアベノミクスの登場に恐怖した。そこにチャンス到来とばかりにジョージ・ソロスら百戦錬磨のヘッジファンドが円売り・日本株買いを仕掛け、急激な円安・株高を招き、これがアベノミクスの効果と外部からは写ったに違いない。

 安倍政権が選んだ日銀の新たな執行部(総裁・副総裁)はアベノミクスとされるリフレ政策を忠実に実行に移した。これが異次元緩和と呼ばれる政策であり、その波及経路がどうなっているかはさておき、円安・株高に驚喜した人々は、これがデフレ脱却に有効なのかもしれないとの期待を抱くこととなり、アベノミクスは流行語となった。ただし、外為市場などでは「下げ3日」が終わると冷静さを取り戻していた。市場でのアベノミクス効果は一時的であり、その後は米国株式市場やFRBの金融政策などが材料視されて動くようになってきた。

 イェーガー(狩人)となった安倍首相が放った一本目の矢は市場を動かした。円安効果もあり、景気や物価にその分は影響は与えていようが、異次元緩和によるマネタリーベースの増加が景気に直接働きかけている兆候は見えない。そもそも期待とか予想という目に見えないものを相手にしている以上は、外部からは具体的な観察ができない。

 アベノミクスの2番目と3番目の矢は市場を動かさなかった。特にレジーム・チェンジを意識させるほどのものではなかった。ただし、TPPへの参加などの結果は残していることは評価する必要があると思う。

 アベノミクスに対する関心が次第に薄れかけていたときに、2020年の東京オリンピック招致という第4の矢が放たれた。アベノミクスの1本目から3本目の矢については、政府の努力跡のようなものあまり見えず、1本目の矢などまさに人任せ(日銀任せ)の格好ではあったが、4本目については安倍首相をはじめ、かなり精力的に動いていた。これは政府専用機の航続距離などにも表れていると思われる。

 この4本目の矢については、本来の意味での国民の期待を抱かせる。期待そのものが薄れかけていたアベノミクスがこれで再び復活してきた。まさに進撃のアベノミクスとも言えようか。

 消費増税も予定通り実施されるとみられる。昨日指摘したようにオリンピックの自国開催は財政の分岐点となる。この勢いを生かして財政再建にもはっきりとした目途をつけられるような5本目の矢もほしいところ。さらに市場の波乱要因とさせないためにも、1本目の矢の処理についても考えておくこともお勧めしたい。

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by nihonkokusai | 2013-09-11 10:08 | アベノミクス | Comments(0)
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