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日銀の次の一手のリスク

 9月3日の朝日新聞の一面に「日銀、消費増税なら追加の金融緩和検討 金利低下促す」との記事が掲載された。この記事によると日銀の黒田総裁は8月30日に集中点検会合に同席した際、増税時に景気が悪化する見通しであれば、追加緩和する方針を示唆していたことが、複数の関係者の話で明らかになったそうである。

 この記事はいくつか注意すべきことがある。ひとつは黒田総裁は消費増税と追加緩和をセットにした話をしているわけではない点である。黒田総裁はこれまでも追加緩和に対しては特に否定はしていない。総裁会見でも支障があれば、上下双方向の調整は行うとしており、今回の発言は特に注目すべきほどのものではない。

 日銀としては細かい金融調節、つまり戦力の逐次投入は行わないとしているが、これも追加緩和を否定したものではない。大胆な異次元緩和を行ってしまったことで、このような大胆な政策を何度も行うことなどできない面もある。また、リフレ政策を全面に押し出してしまった以上は、かつての日銀の政策の延長のようなことはしたくないということもあろう。そもそも実弾に限りがあるという問題もある。

 消費増税による景気への悪影響が出た際に、日銀がそれをフォローする姿勢を示した背景には、政府にはどうしても消費増税を行ってもらわなくてはならない理由も存在する。日銀の異次元緩和による大量の国債買入は、ひとつ間違うと財政ファイナンスと捉えられかねない。財政ファイナンスではないことを示すのは日銀ではなく政府の姿勢が必要であり、政府による財政規律の厳守が担保になっている以上は、世界への公約どおりに消費増税は実施してもらわねば困るものとなる。

 それではもし日銀が追加緩和を行うとしてどのような手段を有しているのであろうか。そもそも今回のリフレ派の壮大な実験場となった日本では、日銀の異次元緩和によりコアCPIが2%に上昇することが理論上の背景にある。物価が上がればデフレが解消されるとしているが、もし予想通りに物価が上がらずに、消費増税による景気悪化が意識されていたならば、日銀の現在の理論からはマネタリーベースを上乗せしなければならず、さらになる大胆な国債買入が必要となるのではなかろうか。質よりも量が求められる。

 来年4月の景気物価動向を予想することは難しいが、もし仮に、あくまで仮の話であるが、2%の物価目標に向けて物価が順調に上昇していたものの消費増税で景気悪化が想定された際に、日銀はどのような政策をとってくるのか。株価下落なども想定されるため、リスク性商品の大胆な買入などが予想される。量というより質が求められるが、日銀としてはこちらの方がまだ実施しやすいと思われる。「貸出増加を支援するための資金供給」や「成長基盤強化を支援するための資金供給」を拡充するなどの方法もありうるか。

 リフレ政策とはデフレからの脱却を目的にしており、それは結果として物価が上がれば良いことになる。景気そのものというよりも物価は金融政策でコントロール可能ということが前提となっている。物価が上がらなければ日銀の責任となるが、景気動向については直接は関与しない。そもそも消費増税は物価を上昇させる結果となるものであり、その分の物価上昇は日銀の目標には加味されないとはいえ、数値上の物価は上昇する。そこにさらなる異次元緩和を行えば、インフレ期待を越してインフレ懸念が生じることも想定される。消費増税後の追加緩和は物価を見るか景気をみるかで手段も異なるとともに、ひとつ間違うと財政ファイナンスへの懸念が強まることや、インフレ懸念に火をつけてしまうことにもなりかねない。

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by nihonkokusai | 2013-09-09 09:54 | 日銀 | Comments(0)
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