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物価連動国債によるインフレ予想は適切なのか

 8月28日の岩田規久男日銀副総裁による京都での講演内容が日銀のサイトにアップされている。タイトルは、「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム、とある。

 岩田副総裁は、「中央銀行がインフレ目標の達成にコミットし、その実現を目指して思い切った金融緩和政策を実施することによって、人々の期待がデフレ予想からインフレ予想に変わり、行動が変わり、経済全体の動きが変わってきます。このことが、政策効果実現の大きな鍵を握っています。」と指摘している。

 中央銀行がインフレ目標の達成にコミットするのは良いが、その実現を目指して行うという「思い切った金融緩和政策」とは何なのか。「思い切った」ことをやれば、デフレ予想がインフレ予想に変わるというが、中央銀行が大量の国債を購入すればインフレ期待が強まるのか。

 日銀の異次元緩和の背景にはFRBの量的緩和も影響していたと思われる。たしかにFRBが大量の国債やMBSを購入することで、インフレへの期待、この場合には市場参加者がそのような期待のもとに買われるであろうとの予想から米国の物価連動国債が買われた。結果からみると普通国債と物価連動国債の利回りの差から算出するブレーク・イーブン・インフレ(BEI)率は確かに上昇した。しかし、現実の物価指数はいっこうに上昇する気配はなく、FRBが目標としているPCE価格指数は目標の2%を大きく下回っている。

 これは何を示すのか。中央銀行が大胆な国債買入を行っても、市場参加者の思惑が入りやすい物価連動債などは期待から買われ、そこから導き出される期待インフレ率が上昇したとしても、あくまでこれは国債の需給バランスから生まれたものであり、正確な物価予測とはなっていなかったことを示す。

 FRBが量的緩和を縮小するとの観測が強まると、日本ほどではないが流動性が低い米国の物価連動国債は急落した。これはBEIからみれば、大胆な金融緩和からの脱却が意識されて期待インフレ率が低下したとの見方もできるかもしれないが、こちらもあくまで国債の需給バランスが影響しただけである。流動性の薄いなか、値上がり期待で買っていた投資家の投げが入っただけである。

 つまりは見えない期待なるものを数値化しようとも、純粋な期待だけを計る物差しはなく、物価連動国債の動きも市場参加者による美人投票の結果を見ているに過ぎない。この数値をもって、期待インフレ率が上がったとか下がったと単純に判断すべきではなく、あくまで参考数値に止めるべきである。

 岩田副総裁は「予想インフレ率の上昇を通じて予想実質金利の低下を促すことが、様々な経路を通じて需要の増加につながっていきます」としている。その予想インフレ率を示すものとして、日本の物価連動国債のBEIのグラフを使っている。そもそも新規発行が現在停止中(10月より再開予定)で、残高が減少している物価連動国債を使うことに問題がある。さらに岩田副総裁の示したグラフからは、異次元緩和で期待インフレ率が上昇したような気配も見えていない。日本のBEIには、消費増税による物価上昇も影響しているが、その説明もない。そのようなものを使って期待インフレ率がどうのと説明すべきものではないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-09-02 09:47 | アベノミクス | Comments(0)
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