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消費増税と法人税引き下げのセット観測は後退

 麻生財務相は15日の定例会見で、安倍首相による法人税引き下げ検討の指示報道を強く否定。会見の場で、当該新聞社の記者に対し、取材源を明らかにするよう述べる場面があった(ロイター)。

 菅官房長官も法人税減税について安倍晋三首相が検討を指示したとの一部報道について、総理がそのような指示をした事実はない、と否定した。

 安倍首相による法人税引き下げ検討の指示報道とは、8月13日の日経新聞一面の「法人税率下げ検討指示」との記事である。このなかで、複数の関係者によると、首相が法人実行税率の検討を関係付省に指示したそうである。関連記事には「税率引き下げには財務省が強く反対する見通し、ともあった。

 15日の麻生財務相の発言によると、法人税を支払う企業が全体の3割強に過ぎない点を指摘し「今の段階での法人税引き下げは効果が少ない」と言い切ったそうである。13日の日経新聞のニュースソースは少なくとも財務省からのものではなさそうである。

 これに対して、甘利明経済財政・再生相は15日午後の記者会見で、法人税率の引き下げは「原資が厳しい中で、プライオリティー(優先度)でいえば、産業の、企業の競争力を強化するための順序としては、設備投資減税あるいは研究開発減税が先行する」との考えを示した。

 ロイターによると、首相による具体的な指示は出ていないものの、一部閣僚や官邸周辺で法人税率の引き下げが有効だとの声が出ているという。

 消費税の引き上げ実施の有無、さらに引き上げる際の引き上げ幅についても最終判断は安倍首相が行うとみられるが、その消費税引き上げについてもいまだに方向性が見えてきていない。しびれを切らした関係者が、法人税減税とセットの可能性をほのめかした可能性があり、それにより市場はいったん安心感から円安株高の動きを強めることになった。つまり法人税減税とセットで予定通りの消費税の引き上げが実施されるとなれば、財政規律を維持させた上で、成長戦略との両立も可能との認識である。しかし、これにも安倍首相は結果としては乗る気ではないことが、今回の麻生財務相や菅官房長官による発言からも明らかである。

 政府は8月の月例経済報告で、物価の基調判断をデフレ状況ではなくなりつつあるとし、7月よりも脱デフレの動きが進んでいるとの認識を示した(日経新聞)。物価の持続的な下落が止まりつつあると分析したそうである。ただし、景気の基調を表す総括判断は前月から据え置いた。

 甘利明経済財政・再生相は15日午後の記者会見で、デフレ脱却の定義は「多少のショックがあっても物価が下がり続ける状況に陥らない」と説明した。デフレ脱却への達成度を問われた甘利氏は「富士登山で言えば7合目くらいだ」と応じた。(日経QUICKニュース)。

 デフレ脱却も道半ばであるとの見方を示したが、アベノミクスやそれによる異次元緩和がなくとも、コアCPIのプラス展開はだいぶ前から予想されていたことで規定路線である。円安による影響は加わっているものの、コアCPIのプラス転換を持ってアベノミクスがデフレからの脱却の大きな要因としては捉えることはできない。コアCPIが1%程度まで上昇してくるようであれば、あらたな物価上昇圧力が加わったということになると思われる。これは今後の動向を確認しなければならない。異次元緩和の効果も半年以上のラグが必要となれば、それが現れるとしても10月以降となる。

 デフレ脱却も道半ば、2013年4~6月期実質GDPは年率でプラス2.6%と予想を下回ったように、力強い回復とまではいっていない。また、軽減税率の導入とセットで行わなければ悪影響が大きいとの意見も出ているそうである。

 しかし、実質的な国際公約となっている消費増税だけに、予定通りに実施するのが筋であろう。もしどうしても延期するというのであれば、その理由も求められる。ただ単純に景気回復を待つといったことでは、これまでのように、いつになっても財政再建に向けての消費税の引き上げはできなくなる。最悪なのは1%ずつとの引き上げ方法であり、これはシステムにかなりの負担がかかる。単純に3%という数値を1%に替えれば済むという問題ではない。このあたりについてもしっかりと現場の関係者を含めて議論する必要があろう。

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by nihonkokusai | 2013-08-19 11:48 | アベノミクス
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