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異次元緩和による長期金利への働きかけ

 7月10日・11日開催の日銀の金融政策決定会合の議事要旨から、異次元緩和による長期金利への働きかけに関するところを確認してみたい。

 「長めの金利への働きかけについて、多くの委員は、6月中旬以降の世界的な金利上昇局面においてわが国の長期金利が安定的に推移したことを指摘した。そのうえで、これらの委員は、日本銀行による巨額の国債買入れが、海外金利上昇や景況感改善などに伴って生じる長期金利の上昇圧力を、リスク・プレミアムの圧縮によって強力に抑制していると述べた。」

 6月中旬以降の世界的な金利上昇とは、6月19日の会見でバーナンキFRB議長は年内に緩和策の縮小に踏み切る可能性を示し、これをきっかけとした欧米の長期金利の上昇である。7月8日に米長期金利は2.74%近辺まで上昇。ドイツの長期金利も1.72%近辺に、英国の長期金利も2.48%近辺に上昇した。しかし、日本の長期金利の上昇は限られ0.9%以下での推移となっていた。

 FRBの緩和縮小の背景には、世界的なリスク後退がある。リスクオフからリスクオンの動きが起き、米独英の長期金利は上昇した。しかし、日本の長期金利の上昇が限定的であったのは、日銀の国債買入がかなり効いていたことはたしかである。

 8月12日の欧米市場でも欧米の長期金利が再び動意を見せ始め、米国の長期金利は2.72%近辺となり、再び2.7%台に上昇した。ドイツの長期金利は1.81%近辺に、英国の長期金利は2.60%近辺に大きく上昇していた。しかし、8月14日の日本の長期金利は0.8%以下のままであった。

 「複数の委員は、債券市場の流動性に関して、長国先物の値幅・出来高比率がなお高めであると指摘した。このうちの一人の委員は、これが流動性プレミアムとして金利に上乗せされている可能性もあると付け加えた。」

 債券先物の値幅・出来高を確認しても、それほど目立った動きとはなっていない。これを見る限りは、特に6月中旬以降は流動性プレミアムが長期金利にオンされているようには思えない。現物債についても、4月や5月に一時流動性が低下する場面はあったが、それは改善されつつある。

 「ある委員は、債券市場の不安定さは潜在的にはなお残されており、今後の国内物価や米国金利の動向が及ぼす影響に注意が必要と述べた。」

 6月のコアCPIはプラスに転じ、米長期金利はここにきて再び2.7%台に上昇ていたが、日本の債券市場にはほとんど影響は出ていない。外部環境等よりも、需給面での日銀の存在感が大きくなっている。ただし、潜在的な不安感が払拭されたわけではないことも確かである。

 「多くの委員は、今後も、市場との緊密な対話や弾力的なオペ運営によって、金利の安定的な形成を促していく」

 日銀の国債買入が長期金利の上昇を抑制していることは確かであるが、これは見方を変えれば長期金利の上昇リスクを無理矢理押さえ込んでいるともいえる。ファンダメンタルズに沿った金利の形成に、もしゆがみが生じているとすれば、そのゆがみがのちに変動リスクに変化する可能性はある。

 これに関しては財務省の出席者から以下のような指摘があった。

 「長期金利の乱高下はこのところみられていないが、国債市場の流動性が低下している中で、依然として、小さなショックでボラティリティが高まる惧れがある。」

 債券市場はひところに比べれば安定化しているように見えるものの、池の中に日銀というクジラがいる状態は続き、業者も入札で買った国債を一部投資家に販売し、残りは日銀に買い取ってもらうという簡単なお仕事となりつつある。市場機能が低下していることは確かであり、この財務省出席者(浅川雅嗣大臣官房総括審議官)の指摘は正しいと思われる。

 「何人かの委員は、金利の安定を確保するためには財政運営に対する信認が維持されることも重要であり、政府が財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことを期待しているとの認識を示した。」

 小さなショックでボラティリティが高まる惧れを回避するために必要なのが、政府による財政健全化に向けた取り組みである。消費増税について今頃になって再検討するよりも、消費増税をまず決定した上で、法人税減税等などもあらたに検討し、悪影響を抑えるとともに成長戦略も意識した行動を取るべきである。財政規律が維持される限りは、日銀による巨額の国債買入により、日本の長期金利は当面は安定していると予想される。ただし、それは潜在的なリスクを潜ませて、見かけ上だけかもしれないことも注意する必要がある。

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by nihonkokusai | 2013-08-15 09:22 | 日銀 | Comments(0)
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