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『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』のまえがきより

 この本を読んでいただけるとおわかりの通り、私はリフレ派と呼ばれる人達の考え方に対しては、あまり賛同できません。そのリフレ派がデフレ脱却の手本としていたのが高橋財政でした。リフレ派は特に大きなレジーム・チェンジとされた日銀による国債引き受けが、デフレ脱却に大きな効果があったとの見方をしていたのですが、ここに違和感を覚えていました。是清の政策が何か勘違いされている面があるのではないかと訝しんでいたのです。

 日銀による国債引き受けは戦後の財政法で禁じられており、現在の主な国でもやはり中央銀行による国債引き受けは禁じられています。その禁じられた政策を行ってまで、デフレから脱却をめざすとするリフレ派の意見は、危険な発想と考えていました。

 ところが2012年11月のアベノミクスの登場により、そのリフレ政策が日銀の金融政策に取り入れられることになり、私自身たいへん大きな衝撃を受けました。私ばかりでなくマーケットも同様であったようです。このショックもあって円安・株高が急速に進行し、リフレ政策を全面に打ち出したアベノミクスは流行語にもなりました。

 アベノミクスにおける金融政策では、さすがに財政法で禁じられている日銀による国債引き受けまでは踏み込みませんでしたが、その代わりに年間発行額の7割もの国債を買い入れるという異次元緩和政策が2013年4月4日に決定されたのです。

 リフレ派の政策が日銀の政策となり、その模範とされたのが是清の政策であるのならば、高橋財政を改めて確認し、それとアベノミクスを比較することがたいへん重要なものになると考えていました。そんな矢先にこの本の執筆を依頼され、異次元緩和を受けて市場が揺れ動いている最中に書き上げたのが本書なのです。

 本の執筆にあたり、あらためて高橋財政のことを調べて見ると、どうも是清はデフレ脱却をめざし、期待に働きかけることを目的として、日銀による国債引き受けを行ったわけではなさそうだということがわかりました。高橋財政でデフレ脱却に成功したのは、最初のレジーム・チェンジとされる金輸出禁止による効果が大きかったように思われるのです。期待に働きかけるというより、円安や財政政策、政策金利の引き下げなどにより直接に経済に働きかける経路が存在していたのです。その財政政策に必要とされる国債の発行方式として日銀の国債引き受けを選択したと思われます。

 これに対してアベノミクスでは、円安による株高や輸入物価の上昇等への影響はあったものの日銀の異次元緩和が実体経済に働きかけるような経路が見当たりません。リフレ派の言うところの期待に働きかける効果についても、なにやら呪文で物価が上昇するかのような印象を持っています。

 アベノミクスの中心には日銀の異次元緩和があり、その異次元緩和の主役は国債です。その日銀による国債引き受けが、高橋財政の出口政策を困難にさせることになりました。アベノミクスもやはり同様に出口が大きな問題となることが予想されます。このあたりについてはぜひ本文を読んで見てください。

 書きたかった高橋是清の政策がこのようなかたちで本になり、うれしい限りです。より多くの方に読んでいただき、アベノミクスとは何であるのかについて、あらためて考える際の参考にしていただけると幸いです。

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by nihonkokusai | 2013-08-07 11:16 | 本の紹介 | Comments(0)
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