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2003年3月の臨時の金融政策決定会合の意味

 日銀の金融政策決定会合議事録等(2003年1月~6月開催分)が公開された。このなかで興味深いのは、2003年3月25日に開催された臨時の金融政策決定会合である。このときの状況について、私はコラムで次のようにコメントしていた。

 「3月25日に日銀は臨時の金融政策決定会合を開催しました。20日には福井新日銀総裁が誕生しています。政府からはさっそく日銀に対して要求・要望が強く出されたと思われ、それに対応する形で福井総裁は臨時の金融政策決定会合を開催したと思われます。まず、行動を起こすことによって政府からの信頼を得ようとしたものと思われ、実際に臨時の会合を開催したにもかかわらず、その結果は現行の政策を維持することを全員一致で決定しました。「なお書き」と呼ばれる「当面の金融政策運営について」の最後に付け足された「なお・・・」の部分や、ロンバート金利(公定歩合)について一部修正があったものの、大きな変更はありませんでした。しかし、そのあと開催された通常の政策委員会(毎週、火曜日、木曜日)において、銀行保有株買取枠を2兆円から3兆円に拡大しました。これを政府は高く評価したようです。ただし、福井総裁は3兆円が限度と釘を刺しています。」(債券ディーリングルームの若き知より)

 この会合ではいったいどのようなことが話し合われたのか。最初の挨拶で福井総裁は、「討議の結果、あるいは結論を東京市場が開いている間に公表すべきだと思っていて」と述べ、当日は異例の8時からのスタートとなっていたことが指摘されていた。市場をかなり意識した会合であったことがわかる。

 最初に金融市場動向について白川方明理事と山本謙三金融市場局長に説明を求め、山本局長が説明した。そのあと福井議長は白川理事に「白川理事は特にないか」と質問し、白川理事は「ない」と答えている。もちろんこの白川理事はのちの日銀総裁である。

 次に調節方針等についても、白川理事と山口廣秀企画室審議役に説明を求め、のちの副総裁となる山口企画室審議役が説明をしている。説明後に「白川理事は特にないか」と質問し、白川理事はやはり「ない」と答えている。

 このあたりのやり取りもなかなか興味深い。実はこのパフォーマンスを重視したとみられる臨時会合には、白川理事(のちの総裁)は反対していたのではないかとの見方がある。「ない」との返事に特に意味はなかったのかもしれないが、その姿勢をあらわにしたかのような印象も受ける。

 臨時会合について、須田委員は不透明感をもたせる可能性を指摘していたが、これに対して福井議長は、3月20日に米英軍はバグダッドへの攻撃を開始したことや、3人のボードメンバー(総裁と副総裁2人)の変更があり、政策対応の不透明感を軽減させ、過剰な期待感も抱かせないために開いたと説明している。ただし、4月7、8日には通常会合が予定されており、このときに市場がそれほど動揺していたわけでない。

 中原委員からも、この会合が持つ問題意識を総裁の方から十分説明する必要がある、との指摘もあった。植田委員からは、臨時会合はアクシデント的な定例会合では対応できないような事象が起きた場合に開くものであり、今回はグレーゾーン位かな、との意見もあった。これはつまり今回は本当に必要あったのか、との意見のように思える。

 私もこの臨時会合の印象はやはり必要あるのかと思っていたが、実際の政府からの要望の有無はさておき、早く行動を起こすことが重要との福井総裁の考え方もわからなくもない。実際にこの後も追加緩和を打ち出し、福井総裁への評価は高まることになる。これはこの年6月の債券市場のVaRショックを起こす要因ともなるのであるが、福井総裁の市場との対話をより意識した政策もひとつの金融政策手段であろう。これに対して次の白川総裁はその姿勢を大きく変えた。パフォーマンスよりも安定重視といった感じであるが、その白川総裁の次の総裁はまさに次元が変わってしまった感があった。

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by nihonkokusai | 2013-08-02 09:22 | 日銀 | Comments(0)
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