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消費税引き上げを躊躇するリスク

 日本の景気は着実に回復基調となっている。2013年4~6月期のGDP実質成長率は年率で前期比3.5%増の予想となっており、消費の盛り上がりが生産を押し上げ、雇用の改善が再び消費を促す好循環の兆しが出ている(日経新聞)。その雇用についても6月の完全失業率は前月比0.2ポイント低下の3.9%と4%割れに。失業率の改善は2か月ぶり。3%台はリーマン・ショック当時の2008年10月以来となった。6月の有効求人倍率は前月より0.02ポイント上昇して0.92倍となり、2008年6月以来の高水準に。円安による自動車などの輸出企業の業績回復が求人を増加させてきているようである。

 この日本の景気回復の背景に円安効果があり、その円安にはアベノミクスによる影響があったことは間違いない。異次元緩和が物価を押し上げるかはさておいて、安倍自民党総裁の輪転機発言に飛びついた海外投資家が、円安や日本株高を仕掛けたことは確かである。その背景には欧州リスクを中心とした世界的なリスク後退があったにしても、急激な円安にはリフレ派の意見を取り入れたアベノミクスが効果を発揮したと言わざるを得ない。

 このアベノミクスが模倣したとするのが高橋是清による高橋財政であり、リフレ派はこれをレジーム・チェンジという言葉を使って称賛しており、デフレ脱却の手本としている。この高橋財政は円安政策と財政政策、そして金融政策をミックスした政策であり、昭和恐慌と呼ばれた不況から脱することを目指したものであった。当然ながらデフレ脱却というより不況からの脱却に向けて政策を総動員した。

 アベノミクスは不況ではなくデフレからの脱却を意図したものであるが、デフレ脱却のためには政策を総動員する必要があるとリフレ派は考えているのであろう。このため来年4月からの消費増税はなんとしても止めたいとの意向も強いように思われる。安倍晋三首相のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一氏は、「2年で5%の増税は景気に与えるショックが大きく、かえって税収が減少する可能性があるとし、1年ごとに1%ずつ引き上げていくなど漸次的な増税が望ましいと表明」(ロイター)し、安倍首相も同様の考えを持っているようである。

 政府が来週にもまとめる中期財政計画では、4月からの消費税率の引き上げを今の時点では明確には盛り込まないようである。消費税引き上げには、景気情勢などを総合的に判断して引き上げを最終判断することになっており、その前に税率を引き上げた場合、景気などに与える影響や必要な経済対策について有識者らから意見を聴くよう指示する方針も伝えられた。

 これに対して甘利明経済再生担当相は30日の経済財政諮問会議終了後の会見で、消費税引き上げについて、リーマン・ショックのようなよほどの外的要因がない限り、消費税を引き上げないとの選択肢はないと述べた。ただし、上げ幅については「私が言及することではない」とし、専門家の意見なども踏まえて安倍晋三首相が最終判断すると指摘している(ロイター)。

 ここで注意すべきは、高橋財政の結末である。高橋財政は「その後」をみるべきではなく、それ以前の政策とその成功だけをみるべきとの意見もリフレ派からはあったが、高橋財政の出口の失敗は見て見ないふりはできない。要するに極端なリフレ政策のリスクは財政規律を蔑ろにするところにある。高橋是清は緊縮財政に移行しようとして、2・26事件で暗殺されてしまう。

 IMFのチーフ・エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏は、アベノミクスに対して、「公的債務が極めて高水準なことを踏まえると、中期的な財政再建計画がないのであれば財政による景気刺激策を実施するのはリスクが高いといえる」と指摘していた。その中期的な財政再建計画の要のひとつが消費増税である。このあたりをしっかりと認識しておかなければ、市場が動揺しかねず、アベノミクスが結果として失敗する可能性もある。

 日銀の異次元緩和で大量の国債を購入しても、それが財政ファイナンスと認識されないのは、政府による財政規律の維持が大前提となっているはずである。景気への配慮も必要かもしれないが、現在の日本の債務状況のなかで異次元緩和を行ってしまった以上、財政規律を維持する姿勢を堅持することのほうが重要ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-08-01 09:43 | 財政 | Comments(0)
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