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2%の物価目標の経路(佐藤審議委員の講演より)

 日銀は2%の「物価安定の目標」実現のための波及経路(チャネル)として、全体的な金利低下圧力と資産価格のリスク・プレミアムを押し下げる効果、ポートフォリオ・リバランス効果、家計・企業や市場のインフレ期待へ働きかけてそれを抜本的に転換する効果、を説明しているが、それについて7月22日の佐藤審議委員は講演で次のような解説を行っている。

 「日本銀行が買入れを進めることによりプレミアムを圧縮し、経済・物価の先行きの見通しと整合的な水準よりも中長期の金利水準を抑えていくことである。これまでのところ、日本銀行による巨額の国債買入れはさまざまな金利上昇要因を抑制してきているし、先行きも買入れが進むにつれてプレミアムの圧縮効果は累積的に強まるとみている」

 これは最初の全体的な金利低下圧力と資産価格のリスク・プレミアムを押し下げる効果についての説明である。日銀は最近、実質金利を持ち出してきての説明もあったが、それよりもこの佐藤委員の説明の方がわかりやすい。FRBの出口政策が意識されて米国やドイツ、英国の長期金利が大きく上昇しても、日本の長期金利の上昇は抑制されていた。これには日銀の国債買入による影響も大きかったことは確かである。ただし、あくまでイールドカーブ全体を押し下げるとかではなく、上昇を抑制する程度の働きであった。

 「日本銀行による資産買入れが直接的に民間金融機関のバランスシートにもたらす変化をみると、バランスシートの規模は変わらないが、国債等が減少し、その分日銀当座預金が増加するという形で資産サイドの構成が変化する。民間金融機関の資金運用の観点からは、運用資産が減少し日銀当座預金が増加することで、ポートフォリオ全体の収益性が低下するため、収益性維持のために期待リターンのより高い資産にポートフォリオをシフトさせる、すなわちリスク性資産への投資や貸出等を積極化することが期待される」

 二番目のポートフォリオ・リバランス効果についての説明である。もしこの動きが出てくるのであれば、最も国債のポジションを落としている都銀の動向が注目される。いまのところリスク資産に資金を大きく移すような動きには出ていない。この場合、リスク資産への移行、つまりそれは株高や、外債投資へのシフトによる円安を期待すべきものではなく、貸出等への資金シフトを意識すべきものであり、これには当然ながら政府の成長戦略が重要となるはずである。

 「現実の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率は、このところの円安による燃料高や電力料金引き上げといったコストプッシュ要因に加え、薄型テレビやパソコン等のIT関連財の価格下落がある程度まで進展したことから、足許ではゼロ%となった。このようななかで、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比はこの夏場にかけて足許のゼロ近傍からプラスに転じていくことを見込んでいる。現実の物価がある程度持続的にプラスとなれば、家計・企業や市場の期待インフレ率もそれに応じて上方に緩やかにシフトする可能性があろう。」

 これは三番目のインフレ期待へ働きかけに関してであるが、この意見にも違和感はない。足下のCPIの上昇は、日銀の異次元緩和が直接影響しているわけではない。物価がマイナスからプラスに転換すれば、将来の見通しも上方に緩やかにシフトすることは十分考えられる。

 「各種アンケート調査結果でみた期待インフレ率も、一部は消費税率引き上げの蓋然性の高まりによるものと識別することが困難ではあるものの、既に上昇を示唆するものがみられる。こうした期待インフレ率の変化が現実の物価にフィードバックし、またそれが期待インフレを高めるというフィードバックループが生じることで、中期的なアンカーであるインフレ期待が上向くというメカニズムを日本銀行は期待している。」

 その期待の生成に、日銀が国債を大量に買い入れて、日銀のバランスシートを拡大させることが、どのような影響を与えるのであろうか。異次元緩和はなくても、今年中にCPIがプラスに転じることは予想されていたことであり、異次元緩和が作用したとは思えない。26日に発表された6月の全国コアCPIはプラス0.4%となったが、これは円安による影響はあるものの、異次元緩和以前から予想されていた。もし期待に作用するようなことがあれば、極端な政策をとったとする以上はもう少し明らかな兆候が出ていてもおかしくはない。佐藤委員は、「そもそも2%ピンポイントで物価を安定させることは不可能」との見解も示している。異次元緩和の意味を問う上でも、今後はこのあたりについての日銀内での議論も必要ではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2013-07-26 13:11 | 日銀 | Comments(0)
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