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高橋財政とアベノミクス、その政策の相違点

 高橋財政によりデフレからの脱却に短期間で成功したのは、金本位制という楔を解き放つことによる。円安を放置する格好での為替政策、緊縮財政から財政拡大への転換を可能にさせ、金融引き締め策から金融緩和策に転じることを可能にさせた。財政政策には国債の発行が必要となり、高橋蔵相は赤字国債の発行を行ったが、その国債発行を容易にさせるために、日銀による直接引受による発行手段を取った。ただし、インフレを抑制するため、日銀は買い入れた国債を売りオペにより売却するという手段を講じた。

 高橋財政が成功したのはダルマ蔵相の再登板への期待もあったが、軍事費の拡大とともにそれに関連して産業構造が軽工業から重化学工業への移行期にあたり、円安や財政・金融政策がダイレクトに効果を与える環境にあったことが大きい。時局匡救事業という財政刺激策も講じたが、歳出増加にあたってはそれよりも軍事費の伸びが大きかった。高橋財政時には、不況から脱することを可能にするだけの波及経路が存在し、それが効果を生むことになった。

 しかし、当時の財政・金融に関しては国内で最も長じていたはずの高橋是清もミスを犯した。そのリスクは当然理解していたはずの中央銀行による国債引受という禁じ手を使ってしまったことである。「一時の便法」としていた日銀による国債引受は、国民には直接痛みを与えない格好での財政拡大を許すことになる。高橋是清であれば軍部の暴走は止められると期待されたが、すでに止められる状況ではなく、インフレを懸念しての財政拡張を止めようとして高橋是清自身も軍部により暗殺される。

 高橋財政は短期間のうちにデフレからの脱却を成功させるとともに、財政面からの軍事拡大を可能にさせた。高橋是清が意図したものではなかったろうが、日銀による国債引き受けが結果として財政面での太平洋戦争を可能にさせ、戦後の狂乱物価の要因となったことは確かである。それにより財政法で日銀による国債引き受けは禁じられることになる。

 アベノミクスはリフレ政策を全面に打ち出したものである。高橋財政を模範としたとされるが、安倍自民党総裁の輪転機発言等からみて、高橋財政下の日銀による国債引き受けによる効果を意識していたものであろう。それが急激な円安と株高を招いたことは確かであり、その円安・株高もあり景気の回復や物価上昇に働きかけることになった。4月4日の日銀の異次元緩和はその期待を繋げることになったが、高橋財政時のように政策がダイレクトに影響を与えるような経路が存在しているのかはかなり不透明である。

 日銀は2年でコアCPIを2%にするという目標に向けて邁進するかたちとなり、欧米の中銀でスタンダードとなって黒田日銀前まで採用していたフレキシブルな政策を放棄した。日銀による国債の大量購入と、この金融政策の柔軟性の欠如が今後のリスク要因となりうる。世界的なリスク後退により、FRBがすでに出口を模索はじめており、欧米の主要中銀が軸足を時間軸政策に移すなか、日銀だけが非常時の政策を続けることにより、期間を決めた物価目標が時間軸を不透明にさせる。これはむしろ長期金利には波乱要因となりうる。

 中央銀行が大量の国債を購入するなかにあり、それが財政ファイナンスと認識させないためには、政府による財政規律を守る姿勢が重要になる。消費増税の行方などによってそれが揺るぐとなれば、高橋財政時と異なり、海外から切り離されていない日本の国債市場で警戒心が拡がる懸念がある。大胆で異次元の政策を打ってしまったからには、繊細な注意が必要になる。異次元緩和が「一時の便法」であるとしても、その出口政策は高橋財政以上に困難となる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2013-07-17 09:29 | アベノミクス | Comments(0)
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