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フォワード・ガイダンスが欧米の金融政策の柱に

 ECBのドラギ総裁は4日、定例理事会後の記者会見で、「理事会はECBの主要金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する」と発言した。これまでECBは、金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、その方針を変更してきたようである。

 ECBのクーレ専務理事は仏紙ルモンドのインタビューで「これはコミュニケーション上の変化であって、金融政策の戦略変更ではない」と発言していた。また、ECB理事会メンバーであるフランス銀行のノワイエ総裁は6日に、「フォワード・ガイダンスはわれわれの責務に完全に付随しており、われわれの戦略の2本柱とも一致している」と記者団に述べたそうである(以上、ロイター)。

 イングランド銀行でも、7月1日に就任したばかりのカーニー新総裁が早速動きを見せた。7月4日のMPCにおいて、金融政策そのものは据え置いたが、政策金利を市場が想定したよりも長期にわたって過去最低に据え置くことを示唆し、こちらも封印していた将来の金融政策見通しを示すガイダンスをはじめた。8月のMPCでは「インフレ・レポートと同時に、何らかのフォワード・ガイダンスを導入する」としている。カーニー総裁は前カナダ中銀総裁であり、そのカナダ中銀はフォワード・ガイダンスをすでに導入していたことで、イングランド銀行でもそれを採用するのではとの観測も流れていたようである。

 フォワード・ガイダンスとは、将来の政策金利などについて事前に示唆することにより、市場の期待に働きかけようとする、中央銀行の市場とのコミュニケーション手段である。それを最初に取り入れたのが日本銀行である。1999年2月の最初のゼロ金利政策を導入した日銀はその2か月後の4月に「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで」ゼロ金利政策にコミットすることを公表した。2001年3月に量的緩和策を導入した際には、「コアCPIの前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで、量的緩和政策を継続する」とし、量的緩和政策の継続に関するコミットメントの条件を明確化した。

 ドラギ総裁は、ECBがフォワード・ガイダンスを取るのは初めてと強調したそうだが、なぜこのタイミングでそれを表明したのか。FRBの量的緩和の縮小に向けた動きで市場が動揺したのを鎮めるためとの見方もできるが、超低金利政策の効果を持続させるために、イングランド銀行の動きも気にしながら、それを検討した可能性もありそうである。

 FRBの債券買入の縮小は9月にも決定されるとの見方が強まっている。そうなると実際に大量の国債を買い入れるような政策を行っている主要な中央銀行は日銀だけとなる。FRBも量的緩和策は縮小しても、超低金利政策は当面継続してくるとみられ、欧米の金融政策はフォワード・ガイダンスを意識したものに主軸が置かれるものと予想される。

 これに対して日銀は2年後にコアCPIを2%にするとの物価目標を主軸にしており、それがもし達成可能であれば、フォワード・ガイダンスについてはかなり不透明なものとなる。これが中期ゾーンの金利を不安定にさせたひとつの要因でもあった。このあたりの日銀と、欧米の中銀のスタイルの違いからも、日銀の現在の政策が現在の世界の金融政策の流れのなかで、極めて異質に見える。現在の政策には柔軟さはなく、その波及経路もはっきりしないにも関わらず、闇雲に目標に向けて邁進しているだけの政策のような見えてしまうのは私だけであろうか。

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by nihonkokusai | 2013-07-10 09:25 | 中央銀行 | Comments(0)
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