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黒田日銀総裁の支店長会議挨拶の変化点

 7月4日に日銀の新店長会議が開催されたが、その冒頭の総裁挨拶を4月15日の支店長会議のものと比較してみたい。

 景気判断については、4月の「わが国経済は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている」から、7月は「わが国の景気は、持ち直している」と上方修正されている。

 7月1日の日銀短観を見ても国内景気の回復基調は鮮明となりつつある。日銀は7月10~11日に開く金融政策決定会合で、景気判断も上方修正し2年半ぶりに「回復」という表現を復活させる方向と報じられている。そうなると上方修正は7か月連続になる。このあたり、アベノミクスによる円安・株高の影響もかなり出ているということになりそうである。7月の支店長会議の挨拶の景気判断のところには「金融緩和や各種経済対策の効果もあって」との言葉が何気なく添えられている。つまりアベノミクスの効果もあって、とのことであろう。

 物価面では、
4月「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もと前年の耐久消費財の動きの反動から、小幅のマイナスとなっているが、予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられる。」
7月「物価面をみると、5月の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%となっており、先行き、次第にプラスに転じていくとみられる。」

 4月にはまだ足下コアCPIはマイナスとなっており、「予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられる」と曖昧な表現となっていた。これに対して5月のコアCPIがマイナスから脱したことを7月には強調し、今後のプラス転換についても触れている。今年中のプラス転換については異次元緩和以前から予想されていたものでもあり、想定内でのものであった。ただし、アベノミクスによる円安が影響していたことも確かである。

 日銀の4月に導入した異次元緩和による影響については下記のような表現となっている。

 4月「日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に実現する。「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。」

 7月「その後、わが国経済は順調に回復への道筋を辿っており、予想物価上昇率について上昇を示唆する指標がみられるなど、その効果はしっかりと働いている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。」

 まず物価目標に対する表現が変わってきている。4月にあった「2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に実現する。」がなくなっており、7月には「物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する」としている。2年以内という期限については時間が経過するとその分短くなるため、取り除いたとの見方もあるが、「できるだけ早期に」という表現もなくなっている。また7月には、長期金利の不安定要因を排除するためなのか時間軸効果を意識した「必要な時点まで」という表現も使われている。民間エコノミストの予想などからも、2年以内での2%のコアCPIは非現実的との見方も多い。数値目標そのものよりもある程度の物価上昇が起きていれば、それもデフレ脱却を意味するということのほうに軸足を置いてきたようにも見受けられる。

 さらに4月にあった物価上昇の波及ルートである「長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え」が7月にはなくなっている。そもそもこの波及ルートには無理があったことは事実。長期金利は4月の異次元緩和後、むしろ上昇している事実を踏まえてのものかと思われる。

 このように4月と7月では、その表現内容に興味深い変化もあった。個人的には、かなり曖昧でどのような数値を示しているのかもはっきりしない「予想物価上昇率」なるものも、いずれ取り除く必要があると思うのだが。

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by nihonkokusai | 2013-07-05 09:34 | 日銀 | Comments(0)
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