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異次元緩和の3つの波及経路が詰まっていないか

 6月11日の黒田日銀総裁の会見において、記者から金融緩和の波及経路についての質問があった。3つの波及経路とは、金利全体やプレミアムに対する働きかけること、ポートフォリオ・リバランシングの効果、さらには期待を通じた効果である。

 長期金利について総裁は、緩和直後に、ボラティリティがかなり高まるがその後、市場との対話を通じて、オペを弾力化したことで、金利変動は落ち着いたとしている。さらに5月に入って、米国の長期金利が上昇するといったことを背景に、再び日本の長期金利も上昇し、ボラティリティも高まったが、5月の後半にかけて、市場との対話を重ね、オペの弾力的な運用を決めたとしている。

 これは質問の答えになっていない。そもそも異次元緩和を行ってイールドカーブ全体の低下をはかるどころか、イールドカーブ全体が上昇してしまっている。その対策が「市場との対話」というのはどういう意味か。大昔の規制金利の時代ではなく、金利は市場で決定される現在、市場との対話はもともと不可欠であり、この総裁発言はむしろ対話がうまくいっていないことを示しているように思われる。むろん対話が行われたからと言って、金利上昇を押さえつけられるわけではない。それこそ対話でなくて圧力になりかねない。

 「長期金利の動向には十分注意し、特に、ボラティリティが高まることは好ましくないので、これを縮小する努力は引き続き行っていきたいと思います。」

 日銀が自ら招いたことだけに、ボラの低下に努力することも大事だが、それには異次元緩和を止めるか縮小する必要がある。長期国債の買入れを今後進めていけば、リスク・プレミアム圧縮効果は強まるとおっしゃるが、金融市場全体の価格変動率が大きくなっている現在、日銀が国債を買い入れれば買い入れるほどに国債の流動性は失われ、価格変動リスクはむしろ大きくなりかねない。

 二番目の経路であるポートフォリオ・リバランシングの効果についても非常に懐疑的である。外債投資の動向を見ても、10日に発表された財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況によると、5月に生保は外債を1111億円売り越している。4月は買い越しになっていたが、買い越しは続いていない。銀行は5月に2兆4391億円も外債を売り越している。外債は総じて売り越しとなっている上に、株も下落している。

 三番目の期待を通じた効果については、いまのところ残存額が限られ、流動性が低い物価変動国債のBEIの予想インフレ率などよりも、株価や為替の動きからもある程度読み取れるのではなかろうか。12日の日経平均は異次元緩和を決めた4月4日以前の水準に低下している。これだけで期待が後退していると言い切れるわけではないが、アベノミクスと異次元緩和は円安・株高を招いたことで期待が広がったことを考えれば、その肝心の株高にもブレーキが掛かった格好となっている。

 日銀の異次元緩和による3つの波及経路は、それぞれ行き詰まりを見せている。もちろんこれは当初からかなり矛盾を抱えた政策であったこともあるが、円安・株高による期待がそのあたりを見えにくくさせていたが、そのベールも剥がされつつある。

 今更、異次元緩和を修正することはかなり難しい上に、世界の金融市場がボラティリティの高いものとなってしまっているため、そのようなことをしてしまうと、東京株式市場がさらに急落しかねない。ただし、オペを通じての微調整などは可能であるはず。ひとつひとつの波及経路をあらためて点検し、国債の流動性を高めるためにはどうのようにすれば良いのかを考えていく必要があろう。それには市場というか、国債に関わりある人達と、異次元緩和そのものを含め、本音をぶつけ合った意見交換も重要になる。

 ポートフォリオ・リバラスについても、それは仕掛けるものではなく結果としてそうなるべきものであろう。異次元緩和だけでリスク許容度を増加させることはできない。リスク資産に資金を投じようとさせるのは日銀の仕事ではなく、きちんとした成長戦略なりを行う必要がある政府の仕事である。アベノミクスに必要なのは異次元で大胆な「成長戦略」であると思われる。その意味で三本目の矢はいまのところ大胆でも異次元でもない。

 最後の経路であるの「期待」に期待したいと言う点が一番、わかりにくい。見えなく揺れ動きやすい期待に働きかけるのは非常に難しい。資金をじゃぶじゃぶになったかのように見せかけても、それで先行きの展望が開けるものではない。実体経済に直接影響を与える政策を打ち、それにより本当の意味での景気回復への期待を強めさせた上で、物価上昇に働きかけることが肝要ではないのか。金融政策とそれによる円安・株高に頼り切った政策から、もう少し現実を見据えた政策に転換すべきときではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-06-15 11:36 | アベノミクス | Comments(0)
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