コレキヨ相場
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麻生財務相は4月19日のワシントンDCの講演で、「1930年代初頭に、日本でケインズ経済学的な政策を行った人物がいます。それが高橋是清です。彼は20世紀初頭に財務大臣を6度、総理を1度務めました・・・彼は、まさに、いま私たちがしていることをやって日本を救いました。」と述べている。
幸田さんによると現在の日本市場の動き、つまりアベノミクスの影響を受けたとされる円安・株高を「コレキヨ相場」と呼ぶヘッジファンドもいるそうである。
1929年10月24日の「暗黒の木曜日」と呼ばれたニューヨーク株式市場の急落をきっかけに発生したのが大恐慌である。このために米国が打ち出した政策が1933年3月のニューディール政策というのは歴史の教科書にも書かれている。それよりも早く、世界最速で不況から脱した国があった。それが日本であり、その立役者となったのが高橋是清であった。
日本の金解禁が遅れ、まさに大恐慌の渦のなかで、1930年1月に旧平価により金輸出を解禁し、日本の景気も急速に悪化する。当時の井上準之助蔵相は緊縮財政へ転換したこともあり、のちに井上デフレと呼ばれた深刻な不況に突入することになる。
1930~1931年の日本の名目成長率ではマイナス10%に近い大きな落ち込みとなっていた。ところが1932年に政権交代があり、再び蔵相として登場した高橋是清が、金輸出禁止と円安放置、低金利政策、拡大財政政策等々、高橋財政と呼ばれる政策を打ち出すことにより、円安・株高を招き、実体経済も急回復した。
高橋財政がスタートした1932年からは名目成長率はプラスに転じ、1933年から1934年にかけては10%を上回る。実質成長率をみても1930~1931年はほぼ横ばい、1932年は4%台となり、1933年から1934年にかけては8~10%という高い成長率を示した(日銀百年史より)。
アベノミクスの効果については、今後の景気・物価の動向を確認しなければ何とも言えないが、「衝撃と畏怖」により円安を促進させ、急激な株高を招いたことは確かである。この点は高橋財政と似ている。高橋財政時もあまりに円安が進んでしまい、景気への悪影響も心配されたあたりも似ている。また、高橋財政時は満州事変などもあり、先行き不透明感も強く、期待で株は上がっていたものの、本当に景気が上向くのか疑心暗鬼だったようである。高橋財政がスタートしたのは1931年12月だが、実際に景気が上向いてきたのは1932年の夏頃であった。アベノミクスのスタートは2012年11月であり、時間的にはそろそろその効果が出始めてもおかしくはない。
ただし、昭和初期にコレキヨ相場は起きたものの、今回はコレキヨのように日本の景気回復を起こさせ、結果としてデフレからの脱却は可能なのであろうか。私自身はアベノミクスと高橋財政と比較すると、いまだ非常に疑心暗鬼なのではあるが。
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