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円安・株高によるベールが剥がされつつあるアベノミクス

 5月9日のニューヨーク市場では日本時間10日の午前3時前に2009年4月以来となる100円台へ突入した。これにより東京株式市場はさらに上昇ピッチを強め、5月23日に日経平均は16000円に接近した。この日にドル円は103円台をつけ、10年債利回りは1.000%に上昇した。ここがいったん日経平均とドル円、そして長期金利のピークとなった。  

 5月23日に日経平均は1000円以上も下落し、その後も下落基調を続け6月3日の夜間取引で日経平均先物は節目とされた13000円を割り込む場面もあった。3日のニューヨーク市場でドル円は100円をあっさりと割り込み、一時98円台をつけた。

 今回の東京株式市場の大幅下落と、その一因ともなっている円の反発の背景には、FRBの出口が意識されていることがある。欧米の株式市場よりも、日本の株式市場の反応度合いが大きいのは、昨年11月14日のアベノミクス登場から、調整らしい調整もなく、東京株式市場が上昇してきたことで、その反動が出たとの見方も可能になる。

 今回の東京株式市場の下落が一過性のものかどうかは、もう少し様子を見る必要がある。日経平均はアベノミクスのスタート11月14日近辺の8600円近辺を起点として、23日の16000円近くまでの上昇の3分の1押しは13500円ぐらいになるが、ここも割り込んできた。

 半値押しとなれば、日経平均は12300円あたりが目安となる。「半値押しは全値押し」との格言もあるが、さすがに全値押しまでは想像しづらいが、地合が変わることも考えられる。それとともにアベノミクスに対する期待感が後退し、円安・株高で覆い隠されていたアベノミクスの本来の姿が浮き彫りにされる可能性がある。

 アベノミクスはデフレからの脱却を目的として、日銀の異次元緩和による円高調整を促し、円安効果もあり株価も大きく上昇した。これによりアベノミクスへの期待はさらに強まり、国内ばかりでなく海外からも称賛された。ところが、円安・株高というベールがいったん剥がされると、アベノミクスに対する矛盾点が表面化し、その実際の効果がどれほどのものなのかという疑問点が浮き彫りにされる。

 その矛盾点としてまず現れたのが長期金利の上昇である。物価を上昇させると言いながら、長めの金利を押さえつけるという二律背反した政策であるとともに、日銀の大胆な国債買い入れが国債市場の流動性リスクを高めることで、それがむしろ金利上昇を招くような結果となっている。その対策が資金供給オペの期間延長などであれば、これもポートフォリオリバランスへの効果を削ぐことにもなりかねない。

 アベノミクスは昭和初期の高橋財政と比較される。海外ヘッジファンドり一部は「コレキヨ相場」と呼んでいるそうである。たしかに両政策ともに円安・株高をまず招いたことや、日銀の緩和政策、その日銀が国債を大胆に購入する点など共通点も多い。しかし、その政策の効果ということを考えれば、背景に大きな違いがあった。

 高橋財政はその前の井上デフレに対処したものであるが、その鍵となっていたのが金輸出禁止であり、それが円安のきっかけとなった。高橋財政前に緊縮財政を行っていた井上準之助蔵相は、健全な財政とともに、不良債権処理、成長に向けての産業のリストラを進めていた。結果としてそれでデフレが進行してしまったわけだが、それがその後の景気回復の礎となる。高橋是清は慎重ながらも財政拡大策をとり、金の流出防止のための高金利政策から低金利政策に移行した。財政拡大余地も金利の引き下げ余地もあり、その効果が出やすい状況にあった。だから高橋是清の政策は効果を現し、1929年から1931年まで年率1%弱にとどまった実質経済成長率は、高橋財政がスタートした1932年には4.4%、1933年には10.1%へと急回復した。

 ところが、アベノミクスでは二本目の矢として財政政策は打たれるものの、すでに大量の債務を抱えた状況では財政拡大策にも限度があり、財政の悪化は長期金利の上昇を招く恐れもある。このため三本目の矢に期待はかかる。そういえば今日、成長戦略第三弾の発表が予定されている。たしかに安倍政権は成長戦力としていろいろと対策を打っているようだが、決め手に欠けている。今回もさほどインパクトのあるものは出されないとの見方が強い(一応、チェックは必要だが)。ここから日銀の政策に期待しても、いろいろと矛盾を抱えこんでいる上に、すでに出来うる手段は打ってしまったとする日銀には効果的な手段はない。さらに米FRBはすでに出口を意識している状況にある。

 物価は今後、確かに上がるかもしれない。早ければ5月の全国のコアCPIあたりから前年比プラスに転じ、その後、0.5%あたりまで上昇してくるとの見方も強まっている。これは円安による影響も大きく、日銀の異次元緩和以前にある程度予想されていたことでもあった。足下景気も世界的なリスク後退や米国経済の回復等で、順調に回復しているように見えるが、アベノミクスが直接働きかけているようには見えない。

 円安・株高というベールが剥がされたときにアベノミクスの真実の姿が垣間見られる。高橋財政のときのように、政策余地が存分にあるわけではないが、そのなかでも三本目の矢を中心に効果的な政策を見いだして、デフレ脱却というか景気の回復に勤めるべきであろう。そうでなければアベノミクスは円安・株高を誘発させただけの政策となってしまう恐れがある。

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by nihonkokusai | 2013-06-05 09:38 | アベノミクス | Comments(0)
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